舞台-theatrical-
□鏡の中のフェアリーテール
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ふいに、総悟が口を開いた。
「アンタ…仕事は?」
「んー?まぁ一日ぐれぇサボったって言われねえだろ」
総悟のため、とあらば近藤さんも目を瞑ってくれるにちがいない。
「副長の座…とられてもいーんですかィ…?」
苦しそうに眉を寄せながらニヤリと口角を上げる総悟に、器用だなぁなんて思いつつ、こちらもニヤリと笑い返す。
「今日だけ譲ってやってもいいけど」
すると総悟はむすっと口を尖らせ「つまんねェの」と小さく呟くと、寝返りをうち背中を向けてしまった。
長い長い反抗期に困り果てながらも ごめんごめん悪かったって、などとご機嫌をとる自分に辟易する。
『副長は沖田さんに凄く甘い』というレッテルに言い返せない自分。
今回だってはたから見れば全く悪くない俺が必死に謝っている。
と、いきなり携帯の着信音が鳴り響いた。
「ちっ、こんな時に…」
そう呟いて携帯の画面を見る。
近藤さんからだ。
山崎くらいだったら着拒してやろうかと思っていたが、そうもいかない。
俺は渋々電話を耳にあてた。
電話を切って布団を見ると 誰?と問い掛けるような視線とぶつかる。
「近藤さんからだ。急な用事ができた。1時間くらいで戻るから、おとなしくしてろよ?」
「…行っちゃうの?」
淋しそうな顔をする総悟に妙な錯覚を覚え、慌てて目を逸らした。
「まあ、行かなきゃだろ」
そっけなく返事をすると総悟は拗ねたようにゴソゴソと布団に潜り込んでしまった。
俺だって総悟の看病を放り出してとっつぁんのおもりなんてまっぴら御免蒙る。
少しだけはみ出た頭をサラリと撫でて
「いい子にしてろよ、ちゃんと寝るんだぞ」
と囁き立ち上がる。
「じゃ、行ってくるわ」
そう言って歩き出そうとすると、布団の中から「いってらっしゃい」と小さく呟くのが聞こえた。