舞台-theatrical-
□鏡の中のフェアリーテール
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「おはよぅございますっと…」
朝7時半、いつものように食堂に顔を出す。
総悟は…まだ来てない、か。
「おう、おはよートシ。目覚めはどうだ?」
いつもにも増して上機嫌な近藤さんはお妙の夢でも見たのだろう、やや顔が赤い。
「まあまあだ」
テキトーに応えて席に着き、朝飯を頬張る。
もちろん土方スペシャルだ。
これで今日も元気ハツラツでござる。
…あれ?トッシー??
8時を過ぎた。
猫舌の俺はまだ茶を冷ますのに必死で席を立っていない。
隊士の姿もまばらになってきた。
…遅い。
いつもなら俺とほぼ同じか遅くて15分遅れで起きてくる総悟が、いつまでたっても顔を出さない。
「おい山崎」
カウンターの奥で皿を洗っている山崎に声を掛けると「はひっ!?」とまぬけな返事をし、こちらの様子を窺うようにちらりと顔を覗かせた。
「なんでしょう?」
「総悟がまだだ」
「え、は、そうですね」
「そうですね、じゃねえよ。お前なんか聞いてねえのか?」
「いいえ、知りませんけど…」
「そうか」
てっきり山崎をパシリに使い、面倒くさいだなんだと言って狸寝入りこいてるのかと思ったが、そうでもないらしい。
「だいたい副長に言わないような事を、沖田さんが俺に言うわけないでしょう」
皿を見つめながら呟く山崎にそれもそうか、なんて思いつつ立ち上がる。
「ちょっくら見てくっか…」
誰にともなくそう言って歩き出すと後ろからやっぱ甘いよなぁ、という声がしたような気がしたが
気付かないふりをして「ごっそさん」とだけ言い置き食堂を出た。