舞台-theatrical-

□昇る朝日はまだ低く
1ページ/12ページ

ある日の夕方だった。


突然屯所の電話が鳴り響き、縁側でうとうとしかけていた俺は うるさいなー、と悪態をつく。

耳を澄ますと隊士の呼ぶ声。


「沖田隊長ー、お姉さまからお電話でーす!でてくださーい!」


え?俺?
なんか俺わるい事したっけ?とビビリながら出る電話口。


『最近どーお?』


それは他愛もないおしゃべりだった。



外で会う約束をして、屯所を出る。

姉と二人で江戸の町を歩くのは久しぶりだった。
ペロキャン買ってもらったり、仕事の話を聞いてあげたり、なんでもない事だったけど楽しかった。


夜になり、暗いし危ないからと思い家まで送る。

「ちゃんとお仕事するのよ。お友達と仲良くね」
なんて母親めいた台詞に軽く返事をして背を向けた。

二歩ほど歩く。
俺を呼び止める声。

振り返ると姉は、とても辛そうな顔をして少し躊躇ったあと口を開いた。



「おじいちゃんが、亡くなったわ…」



え…?

秋の冷たい風が頬を刺す。

おじいちゃんが、死んだ。


「…そーですかィ。わざわざ教えてくれてありがとうごぜェやす。葬式には出やすんで呼んでくだせェ。多分…行きまさァ」

それだけ言ってその場を去った。


俺は無意識に空を仰いだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ