舞台-theatrical-
□昇る朝日はまだ低く
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ある日の夕方だった。
突然屯所の電話が鳴り響き、縁側でうとうとしかけていた俺は うるさいなー、と悪態をつく。
耳を澄ますと隊士の呼ぶ声。
「沖田隊長ー、お姉さまからお電話でーす!でてくださーい!」
え?俺?
なんか俺わるい事したっけ?とビビリながら出る電話口。
『最近どーお?』
それは他愛もないおしゃべりだった。
外で会う約束をして、屯所を出る。
姉と二人で江戸の町を歩くのは久しぶりだった。
ペロキャン買ってもらったり、仕事の話を聞いてあげたり、なんでもない事だったけど楽しかった。
夜になり、暗いし危ないからと思い家まで送る。
「ちゃんとお仕事するのよ。お友達と仲良くね」
なんて母親めいた台詞に軽く返事をして背を向けた。
二歩ほど歩く。
俺を呼び止める声。
振り返ると姉は、とても辛そうな顔をして少し躊躇ったあと口を開いた。
「おじいちゃんが、亡くなったわ…」
え…?
秋の冷たい風が頬を刺す。
おじいちゃんが、死んだ。
「…そーですかィ。わざわざ教えてくれてありがとうごぜェやす。葬式には出やすんで呼んでくだせェ。多分…行きまさァ」
それだけ言ってその場を去った。
俺は無意識に空を仰いだ。