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□優しい嘘
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『武のバカッ!』


「なっ、おい、葵!」





お昼休み。
私はいつものように彼氏である武と一緒に屋上で2人でご飯を食べていた。


そんな時にちょっとしたことで喧嘩してしまい、というより、一方的に怒っちゃったんだけど…。


原因はただの私のヤキモチ。

だってあんなに爽やかでイケメンで優しくてファンクラブまである人が彼氏だと、誰だってヤキモチ妬くことあるよね?



まぁ、そんなわけで今、激しく自己嫌悪中な私は自分の席に突っ伏している。




予鈴のチャイムが鳴り、隣からはイスをひいて席についた音が聞こえた。



…気まずい。



私は窓側の一番後ろの席なんだけど、実は隣はさっき喧嘩した当の本人、武だったりする。



『……』


「……」



いつもなら先生が教室に入ってくるまで武と話をしている休み時間だけど、さっきあんなことを言ってしまった手前、話しかけるなんてできない。




ガラッ


「授業始めるぞー」



あ、もう先生が来たのか。

そう思ってのそりと顔を上げる。




お昼時の強い日差しが目に染みてまぶしかったため、思わず顔をしかめた。



「えー、この前の続きからやるから、教科書の54ページ開いて…――」



先生が指定した教科書のページを開く。


すると、右隣から視線を感じてそちらを見ると武とバッチリ目が合った。



思わず俯いてしまう私に構わず武は私の名前を呼んだ。



「葵」


『…な、なに?』



答えないのも変なので、とりあえず視線は教科書に向けたままにして返事をしてみる。



「…教科書、忘れちまってさ。見せてくんね?」


『……うん』



小さく頷くと、武は机をこちらに寄せてきた。

私も少しだけ机を武の方に動かすと、教科書をちょうど間の見える位置に置いた。




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