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□今日は何の日?
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…あ、そういえば今日は4月1日。

世間はエイプリルフールというやつだ。




『冗談も嘘もほどほどにしてよ』


「おや?何故嘘だと思うんですか?」


『何故って…今日は4月1日だよ』


「?」



訝しげに首を傾げる骸。

まさかこの男、エイプリルフールを知らないのか…?



『…あんた、今日が何の日か知らないの?』


「4月1日に何か行事があるんですか?」



え、まじで?


あぁ、骸はイタリアから来たんだっけ。

イタリアにはエイプリルフールがないのかな。
もしくはこの男が世間知らずなだけ。




『知らないならいい』


「………」


『………』


「………」


『何か言いなよ』


「葵」


『何?』


「葵は僕のこと、どう思ってますか?」


『迷惑な奴』


即答!?しかもその答えなんかひどくないですか!?」




自分の行動を振り返ってから言い返してよ。

私はひどいことなんか言ってないよ。






…でもさ、骸。
私は別に骸のこと嫌いなわけじゃないんだよ?



だってこんな私に構ってくれる人なんていない。


いつも一人だった私なんかと一緒にいてくれて、本当はすごく感謝してるんだ。

一緒にいれることが嬉しいって思ってるんだよ。





…あれ?
なんかこれじゃあ私、まるで…。




「葵はそんなに僕のこと嫌いですか?」


『……』


「…?葵?」


『……………嫌い』


「!」




言ったら骸は目を見開いてから悲しそうな顔をした。




『ばーか』


「な、なんですか、いきなり人をバカなんて!」


『骸なんて嫌いだよ』


「改めて言わないでください!余計へこみます」


『バカ!そんなだからバカだっていうんだよ』


「なっ、二回言いましたね!?」


『今日は4月1日だよ?』


「……………は?」


『本当に知らないんだね。今日はエイプリルフール、世間一般では嘘をついてもいい日なの』


「え…」


『だから、骸なんか嫌い』




骸に見つめられることに耐えられなくて視線をはずす。


今私はガラにもなく顔が真っ赤かもしれない。

だって、今のセリフは裏を返せば…。



「ほ、本当ですか?」


『エイプリルフールも知らないなんて、どこの世間知らずの王子様なわけ?骸なんか嫌いだってば!』




言った瞬間、私の目の前は真っ暗。


骸に抱きしめられたんだと、遅れて気づいた。




『骸…苦しい…』


「えぇ」


『離してよ』


「嫌です」


『苦しいってば…』


「…葵、僕は貴女が嫌いです。大嫌いです!」


『ッ!…ばーか。あたしだって大っ嫌いだよ、骸』




身体を離して、どちらからともなく笑いあう。



不思議だね。


言ってる言葉は普通なら傷つけるものなのに、私たちの心はこんなにも暖かい。






今日は嘘で本音を言ってみよう



(大嫌いの反対は、もちろん大好き)




end
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