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□君は特別
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「おーい、整列しろー。今日の競技はバスケットボールだぞー」



どこか気の抜けた先生の声を聞きながら私はチラリと男子の方を見た。


男女別の体育の授業だが、体育館を2つに分けて使っているのですぐ近くにその集団が見えるのだ。


私は銀色の頭を見つけて頬を緩ませた。



さすが、ジャージ着てても似合うなぁ、なんて。
私は親バカならぬ彼女バカかもしれない。



銀色のそれをもつ私の自慢の彼氏は、この学校ではいい意味でも悪い意味でも有名な獄寺隼人だ。



じっと見てたのに気づいたのか、バチっと目が合ってしまい、何となく恥ずかしくなって目を逸らした。


また眉間にシワをよせて怪訝な顔をしてる彼がすぐに想像できてしまい、笑いが漏れる。




…やっぱり私は彼女バカかもしれない。
というより、末期かもしれない。




バスケの試合が始まり、私は赤いゼッケンに身を包んで気合いを入れた――



つもりだった。



「葵、パス!」


『はい!』



返事をしたのもつかの間。

足に力が入らずに、ぐらりと身体が傾いだ。



『あ…っ』


ドサッ


「葵!?」



倒れてみてから思った。

試合は始まったばかりなのに汗と息切れがひどく、さっきよりだるさが増している気がする。



我ながら、鈍くね?

心の中で嘲笑して、立ち上がろうともう一度身体に力を入れてみるが、どうやら無駄らしい。



「葵ちゃん!!」

「月咲どうしたんだ、大丈夫か!?」



先生が珍しく慌てた様子で声をかけてくる。


男子の体育も私のせいで一時休止しているようだ。



うっわ…私、みっともな…。



ザワッ



…?

さっきとは違う空気を感じて、うっすらと重いまぶたを開けると、視界の端にあの銀色が見えた気がした。


ふわりと身体が浮く感覚がして、気づくと私はお姫様抱っこ状態。



……隼人、なの?


なんで…?


…だってこの前…。


私は脱力したまま数日前のことを思い出していた。




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