short
□Please realize!
2ページ/7ページ
「…なんだよ、それ」
“親切心で助けてくれてるだけで”
それだけじゃない。
オレが葵を気にかけてる理由はそれだけじゃないのに。
…本当、鈍感な奴。
結構わかりやすくアピールしてると思うんだけどな、オレ。
「よっ!ツナ、どーかしたか?」
名前を呼ばれてハッとする。
顔を上げれば見慣れた笑顔があった。
「山本…おはよう。何でもないよ」
「そーか?教室入ろうぜ」
「うん」
さっき盗み聞きみたいなことをしてしまい、教室に入るのが少し躊躇われたが、山本に背中を押されて中に入る。
ちょうど教室の真ん中あたりの席にかばんを置いて隣を向くと、葵と目が合った。
『あ、おっ、おはようツナ君!』
少し慌てた様子がかわいい彼女に、オレも微笑み返す。
「ん、おはよう。…あのさ」
『え?』
「あぁ、えっと……」
何が“あのさ”なのかよくわからないまま話し掛けたことに今更ながら後悔。
「き、今日の放課後、ひま?」
『えっ、今日?…うん、特に何もないけど…』
苦し紛れに出した言葉だったけど
いいことを思い付いた。
「じゃあ、友達にプレゼント買いたいんだけど、ちょっと付き合ってくれる?」
『わ、私でよければっ!』
顔をピンク色に染めて言う彼女は、やっぱりかわいい。
買い物なんて予定してたわけじゃないけど、少しくらい葵にオレの気持ちわからせてやんなきゃね。
.