short

□好きなもの
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『武って何が好きなの?』





………。




ちょ、ちょっと待て自分!!


その話題から離れなきゃ自爆する可能性高いでしょーが!!




武をちらっと見ると、キョトンとして私を見下ろしていた。


うっ…かわいいなオイ。




「好きなものかー」


『……』



いや、でも急に質問を訂正するのもおかしいよね…?


ここは話の流れで別の話題にもっていければ…。



「結構いろいろあるぜ」


『武って嫌いなものなさそうだもんね!』


「まーな!まず、野球だろ?」


『やっぱり』


「それから…ダチ、並盛牛乳、親父の寿司、マフィアごっこと……」



ひとつひとつ思い浮かべながら武は指をおって数えていった。


なんか最後に気になる単語入ってたけど、ここはスルーしておこう!



「購買で売ってる焼きそばパンも好きだなー」


『あ、私と一緒!』




武も焼きそばパン好きなんだ!

そう思うと、なんか共通点があることがうれしい。



やばっ。
私ニヤニヤしてるかも。


慌てて緩んだ顔を引き締める。



「んー、あとは…」


『……』


「月咲」


『ん?』



武に突然名前を呼ばれて、顔をそちらに向ける。


いつになく真剣な顔が私の鼓動を早くした。



『え、なに?』


「オレの好きなものはこのくらいだな」


『え?』




今、私の名前も、その好きなものの中に入ってた…?


いや、まさか。


でも…じゃあ私の名前を呼んだ意味は?




「そんなに百面相してんなよ。オレ、今せっかく人生初の告白したんだぜ?」


『え、告白!?』


「え、って…。ハハハ!気づいてなかったのな」




結構かっこよく言えたと思ったのになー、なんて。

自分の告白をそんな軽いノリであしらっちゃっていいんですか!?




『えっと…まじで?』


「ん。オレ、お前のこと結構前から好きだったんだぜ?」



ニカッと笑う武に、キュンてくる胸を抑えられない。
私の気持ちも、伝えなきゃ…!



『私も!その…武のこと、前から好きだった…』


「ははっ、じゃあオレら両想いだったのな!」


『…う、うん』



早い鼓動に加わり、かああ、と顔が熱くなる。



澄んだ青空の下の屋上で

好きなものリストの中にはお互いの名前。


もうこっそり呟く必要なんてないね。




end
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