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□その想いは昔から
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『どうかした?』


「あ、いや、なんでもない!葵好きな人いたんだ!その願い事叶うといいね」



オレは気持ちを悟られたくなくて早口でまくし立てた。



『……』




葵はなぜか少しだけ、悲しそうな顔をした。




「…葵?」


『綱吉は、私の好きな人、気にならないの?』


「え?」


『私っ…私が好きなのは―――、』


「待って!」


『え?』


「聞きたく、ないよ」


『っなんで…』


「……だってオレ、葵のこと好きだから」


『!』


「それなのにお前の気持ち聞いちゃったら、よけい失恋の傷広がるだろ」


『ち、違う!私が……私が好きなのは、綱吉だよ!』


「え?」


『綱吉のことが好きなの…!だから、私が気持ちを伝えたかったのは…っ!』



言葉途中でオレは葵を抱きしめた。



『つな、よ……』


「ばか。焦らせるなよ…。こんだけ昔から一緒にいて、ずっと好きだったのに、失恋しちゃうかと思っただろ」




抱きしめる力を強めると葵はくす、と笑った。



「な、何がおかしいんだよ?」



身体を離して葵の顔を覗き込むと、悪戯が成功したような顔をしてオレを見つめ返した。




『本当に叶ったなーって、思って』


「?」




葵はあの包み紙をオレの目の前に掲げた。




『これのおかげ、かな?』





オレは葵にふわりと微笑まれて一気に顔が熱くなった。



慌てて目をそらして、もう一度抱きしめる。




「そんなんにお願いしなくても…」







その想いは昔から叶ってたよ…――




心のなかで、途中まで言った言葉にそう付け足した。




end
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