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□わすれもの
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『うわ、すっかり暗くなっちゃった』


あ、どうもこんばんは。
月咲葵です。
委員会の仕事ですっかり帰りが遅くなってしまいました。

本当はツナや獄寺と帰る予定だったんだけど…
一緒に帰るどころか かなり遅くなっちゃって、辺りはもう真っ暗。


途中、部活が終わった山本が教室に忘れ物を取りに来た時に、手伝おうかと声を掛けてくれたけど
部活で疲れてるだろうからと丁重に断った。

今思えば、野球部が終わったってことはその時点で結構遅い時間だったはずだ。


あのとき、早めに切り上げて山本と帰ればよかった…。


『早いとこ帰らなきゃ』


雲雀さんに見つかったら大変だよ。
何僕の学校で遅くまでウロウロしてるの、咬み殺すよ、なんてね(笑)



そんなことを考えながら急いで帰る支度をして生徒玄関へと向かう。


靴を履き替えていると、不意に後ろから肩を叩かれた。



『うひゃいっ!!?』

「うお!? なっ、お前変な声出すなよ!」

『え?』



聞き慣れた声に振り返ると、そこには綺麗な銀色の髪が揺れていた。


『ご、獄寺!?』


「何だよ」


『何だよ、じゃないでしょ!何でここにいんの!?』


獄寺はツナと一緒に帰ったはずなのに。


「それは…あれだ、ほら」


『…?何よ?』


「………わ、忘れ物だ」


『獄寺も忘れ物?』


「オレ、も?」



訝しげに聞く獄寺に、山本も部活が終わってから忘れ物を取りに来たと告げると、何故か舌打ちをした。

どんだけ山本に敵意向けてんのよ、もう。



『なんか獄寺が忘れ物なんて珍しいね?』


「…べ、別にお前に関係ねぇだろ」


『そんな言い方しなくてもいいじゃない。どこに何忘れたのか知らないけどもう取ってきたの?』


「お、おう」



妙に焦りを見せる獄寺を若干不審に思いつつ、あたしたちは学校を後にした。



「お前、ずいぶん遅かったじゃねぇか」


『あー うん。ホントはもう一人の委員の子と二人でやる予定だったんだけど、その子風邪で休みだったみたいで』


「へー」


『聞いておいて興味なさげに返事しないでくれる?……って、あれ?獄寺家こっちだったっけ?』



校門を出てからしばらく。
いつもツナや獄寺、山本と四人で帰る時に分かれ道になるところまで差し掛かった。

いつもならツナ、獄寺と山本、あたしに別れるんだけど、なぜか今日は獄寺もこちらに歩を進めている。



「……」

『ちょっと、聞いてるの?』

「送る」

『は?』

「だから、送るっつってんだよ」


思わず歩みを止めて、先を歩く獄寺の背中をぽかんと見つめるあたし。

それに気づいて、獄寺は振り返った。


「何止まってんだよ。っつーか何だその顔」

『や、だって、獄寺が女の子を送るとか言うんだって思って』

「お前、オレをどんな奴だと思ってんだよ」



呆れたようにそう言って、さっさと歩かないと置いてくぞ、とまた歩を進める獄寺。


あたしは獄寺に置いていかれないように、急いで彼の隣に並んだ。



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