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□人気者の君に妬く
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「山本くーん!」
「武〜!頑張って〜!」
「きゃー、かっこいー!!」
きゃあきゃあ騒がしい校庭。
私のイライラは募るばかりだった。
今日は野球部の校内練習試合。
AチームBチームに分かれてやる練習試合は、並盛のちょっとした名物だったりする。
そのため、いつにも増してギャラリーが騒がしい。
野球部のマネージャーである私は、タオルやスポーツドリンク、救急箱などを準備しながら、一人ため息をついた。
だって…
一年生にしてレギュラー入りで、本日のギャラリーのお目当てである山本武は私の幼なじみ兼、彼氏。
昔から一緒にいるせいか、ただの幼なじみだとしか思われてなくて
ファンレターやらラブレターやらを渡してくれ、と私に言って来る人も多い。
『断れる勇気がない私も私だけど…』
思わず、自分自身に苦笑を漏らす。
武がかっこよくて人気があるのも、運動神経バツグンなスポーツマンだってことも、人望があついのも
一緒にいれば嫌ってほどわかる。
平々凡々な私にはもったいないくらいの男の子だって自覚もしてるよ。
でもさ。
『これはさすがにちょっと、へこむ…かも』
本日二度目のため息をはいて、試合中の彼を見つめる。
そりゃ、あんなに爽やかイケメンだとファンクラブもできるわな。
なんか、ちょっと自分が惨めに思えてきた。
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