short
□Please realize!
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「ねぇねぇ、葵ってあのツナ君と付き合ってるって本当!?」
『へ?』
ある日の朝。
登校してきたばかりの私は、教室に入るなり友達にそんなことを言われて詰め寄られた。
『な、な、何言ってるの!?そんなわけないじゃん!?』
ツナ君――もとい沢田綱吉君は中学時代はダメツナってあだ名がつくくらい何をやっても冴えなかった。
しかし高校に入ると別人のように勉強もスポーツもできる男の子になっていた。
しかも、かっこいいし…。
今ではファンクラブもあるとか。
「でも、最近よく一緒にいるよね?」
「この前も二人で帰ったんでしょ!?」
『そ、それは私が武の幼なじみでっ!
武とツナ君も仲良いから、その流れっていうか…。ぐ、偶然二人になっちゃって…。
最近一緒にいるのも、私がどんくさいとこあるから、ツナ君は親切心でいろいろ助けてくれてるだけで…!』
元々、中学の時からそんなに親しい仲じゃなくてただの顔見知り程度だった。
同じ高校に入って初めて同じクラスになったから話す機会が増えただけなんだ。
「えー、なんだぁ。そうなの〜?」
『う、うん』
友達は少しつまらなさそうに自分の席へと戻って行った。
ホッと安堵の息を漏らす。
誤解、解けてよかった。
確かに私はツナ君が好き…だけど。
私なんかとツナ君は釣り合わないし、こんな噂広まったらツナ君に迷惑かけちゃう。
なんて、言ってて自分で落ち込むんだけど…。
こんなことを考えて自分自身に苦笑いをこぼしているとき
教室のすぐ傍の廊下に立って話を聞いている人に、私はまったく気づいていなかった。
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