日常編

□Prologue
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大きな扉の前で深呼吸してから、コンコンと控えめにノックをする。


「どうぞ」


優しい声が聞こえて扉を開けた。


『こんばんは、九代目』


「やぁ、りくさん。急に呼び出してすまなかったね」


『いえ…』


手招きされて、促された椅子に座ると、九代目は少し躊躇いがちに口を開いた。



「実はりくさんに、頼みがあるんじゃ」


『…日本行き…ですか?』


「!」


『……わかっていました。十代目候補のところですよね』


「…あぁ、その通りじゃよ。…お願いできるかね?」


『もちろんです』



ふわりと微笑むと、九代目は安堵の息を漏らした。



「(不思議な子だ。笑顔一つで、こんなにも心を穏やかにする)
…ありがとう。日本については家光が案内することになっているから、何でも聞きなさい」


『はい!』




***




私がここで暮らして一年になろうとしていた今、この地を離れるのは少し寂しい感じがする。

やっと慣れてきたのにな…。
それに私、一人でやっていけるのかな?


ベランダで晴れ渡った空を見上げる。
包み込むように広がる大空は、まるで私の不安を拭い去るようだ。




うじうじはしてられない。

私が少しでも、みんなが笑顔になれる未来を作らなきゃ。

そのために私はここに来たのだから…。




一年前、この世界に来たときのことに思いを馳せながら私はもう一度大空を仰いだ。




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