サイト開設記念リク

□紙模様/baroque様
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紫煙を吹かし空を仰げば、ふわふわと白に光る雪がゆっくりと降りてくる。小さな結晶の塊はやがて指に挟んでいた煙草の上に落ち、小さく燃える火を消してしまった。



お登勢は、4年程前にこの地を去って行ったある白い男を思い出していた…何の縁か彼と出会ったのも雪の日であれば、彼らと別れたのも丁度今日のような、静かな雪の降る真夜中であった。



最近は以前程の体力もなく、店も半分はたまとキャサリンに任せている。冬に入ってからは特に、体に悪いからと煙草さえも止められているのだ。



しかし、どうにもこの季節になるとかつてスナックの2階で胡散臭い商売を騒がしく働いていた彼ら、銀時とその家族らを思い出すのである。
…彼らからの連絡はあの時から一度もない。気を落ち着かせる為に一服をと、この雪降る中外へ出たのだが…それは不思議と温かい雪に消されてしまった。



「お前がそんなことする柄かい。全く、寒くてしかたないよ。」



軽く目を瞑って笑い、息を吐く。そのまま踵を返し、ゆっくりと店の戸を開ければ、カウンターの中で食器を洗っていたたまが迎えてくれた。



「お帰りなさいませお登勢様。雪が降ってきたんですね、今日は寒いですから体調には気をつけて下さい。」



「ありがとうよたま。なんだか今日は懐かしい気分でね…奴を思い出したのさ」



先程お登勢が洗った食器をてきぱきと食器棚に収納する様子を眺めながらたまとの会話を続けていたが、暫くすると玄関の戸が開かれて冷気が流れ込んでくる。



「お帰りなさいませキャサリン様…どうかなさったのですか?」



「ちょいとキャサリン、寒いだろ…早くしめてくれないか?」


戸を開けたまま微動だにしないキャサリンに二人が声を掛けると、緩慢な動作でその顔が上がる。その様子にカウンターに居た二人は思わず腹を抱えて笑ってしまった。

聞けば通りすがりの飛脚屋がスリップして飛び込んできた上に、雪まみれの配達物の中から小さな封書一つを投げつけると逃げるように去っていったのだの言う。



憤りを顕わにするキャサリンを宥めながらもお登勢らは彼女の持つ手紙に興味をもったようで、三人で覗き込む。


そこに入っていたのは、数枚の便箋と鮮やかな一枚の写真。
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