サイト開設記念リク

□感覚と良心/煉様
1ページ/5ページ



「本当にその、貴方の息子さんはこの江戸にいるんですよね?」



と或る夏の日の真選組。突然の来客に同じく突然駆り出された非番のはずの山崎は、思わず目の前にいる婦人の言葉をそのまま聞き返していた。



婦人ははい、と呟き、小さなブランド物のハンドバッグから大切そうに小さな紙を取り出した。山崎は彼女の品行を眺める。



目の前の御婦人は人捜しをしていて 大江戸警察の方へ行ったのだが… その身分と捜し人の不審点から真選組に通された。彼女が尋ねた署から最も近い大きな警察施設だったからともいうのだろう…



何せこの方は江戸の幕府が開かれるよりもずっと前から上流貴族の護衛や身辺を司ってきた家系で、貴族の没落後も幕府の地方の有力家門として一目置かれてきた一族の現女主人なのだ。


彼女は丁寧に写真を山崎の方に向け言う

「これは息子が三歳の頃の写真…だそうです。先に申しました通り、私は出産後に体調を崩し、一人娘を産んだのだと伝えられたまま20年間を過ごしてしまったのです。
当時、一族では双子というのが不吉なものとして捉えられていて、珍しい髪色をしたあの子を父の一存で貧しい孤児院へと預けられたのです…。」



視線を落として涙ぐむ貴婦人になにも言えず、山崎が沈黙しているとやってきたのは、本来最初から此処に居るべき人物 沖田総悟であった。




「それで、事実を知った後には例の孤児院はとっくに閉鎖してた上に、子供達が何処へ消えたのかは謎だったって事ですかィ じゃあ尚更、なんで今になって江戸でご子息捜しをしているんですかねィ? 」



引き戸に背を凭せ掛けながら少々刺のある言葉を発する沖田に山崎が注意を促そうとしていると 婦人が先に話を再開した。



「そうですね、信用して頂くにはもう少し詳しくお話しますわ。

この写真は、その孤児院で働いていたという方からお受けしましたの。

孤児院は本当にいきなり閉鎖してしまったのですが、あの子の珍しい毛色から目撃者がいたらしくて、暫く戦場跡で放浪して過ごしていたみたいなんです…
その容姿から鬼だなんて噂されながら、必死に生きてくれていたんです。…っ…」




「…その後息子さんは、息子さんを拾った方の元で成長したものの、その方に不幸があったのをきっかけに攘夷戦争へと参加したらしい…んですね。」



調査書に目を通しながら山崎が気まずそうな表情を浮かべるが、婦人は笑って、



「真選組がどのような所かは理解しているつもりですわ。勿論罪を犯しているのなら、…母親としての権利なんてないけれど 償わせるつもりです。只、どうしても謝りたくて…っ。…すみません、続けてください。」



「はい。それじゃ、その後貴方は或る元攘夷志士の商人と話をする機会を設けることができ、その限りなく息子さんだと思われる人物の話を聞けた、ということであってますか?」




「そうです。彼は息子とは今も連絡を取り合う仲のようですが、どうしても仲介はできないといって、
[おんしの息子さんは今幸せじゃ。それは息子さんがやっと手に入れた平穏じゃき、大切に思っているなら決して、壊してはいかんぜよ。友を不幸をするならわしゃ鬼になるきに覚悟しとーせ。だがおんしの事、本当に嫌いにはなれん気がするが…ほりぁ息子さんと同じ血が流れちゅうことやき。おまさんの力で探し出して、会いに行って欲しいちや]


といって、今江戸に住んでいる事だけを教えてくれたんです。」



「それですぐに警察に行ったものの、捜索人の名前もわからないん上に 元攘夷志士だって事からここに来たんですねィ。江戸に住む元攘夷志士で元来の銀髪…ですかィ」



沖田と山崎は納得のいかない表情で目を合わせる…



(おい山崎コノヤロー この条件に当て嵌まりそうな奴はいねーのかァ?)

(なにいってんですか…この条件にぴったり当て嵌まるって言ったら、そりゃ…万事屋の旦那しかいないでしょーがっ!!しかも、あと1時間くらいでこっちに来るはずですよ)



(旦那がこんな大層な血の流れるお人だなんて信用できねーもんで。 そーいや一応事情聴取って事で呼んでましたねィ..好都合でさァ)



「その息子さんとやらにちょいと心当たりがありましてねィ…今夜7時にもう一度真選組まで来ていただきたいんでさァ。」


「本当に、ですか?本当に今夜会えるんですの…?」



突然の彼らのセリフに若干涙ぐみながら婦人の声はは震えている…

☆☆☆

彼女…銀時の母親なのだろう人物が礼節をもった所在で出ていくと、先程の部屋には万事屋の旦那となにかと関わりのある4人が集まっていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ