短編

□桜の約束
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「銀さーんっ」


 耳に届いた声に眼をゆっくり開くと、視界には見慣れた格子の天井。


…我らが万事屋の事務所兼住居だ。


時刻は午後3時。


昼食後、あまりにもあたたかな日和に睡魔に負け3人揃って…いや+1匹で昼寝に興じてしまったんだろう。全然覚えてないけど。


「あー」


適当に声をだし、見回すとどうやら寝転けてから2時間。最初に起きたのが生真面目な家政婦少年だったというところだろう。もちろんアルアル口調の毒舌娘と真っ白な毛並みの凶暴ペットはまだ夢の中。


季節は春。桜も散り、夏へと準備を進めるような時期だ。




上体を起こしたところで閃いた。昨夜見つけた場所に来年行こうと思っていた予定を取り消す。



今日が絶好の機会ってやつじゃねーの…




「おい。神楽、定春も起きなさいっ!」




一度決めれば話は早い。ふざけた口調で立ち上がり、欠伸を殺しながら伸びをする。




新八にも声をかけ、出かける準備を…あ〜眠い。




眠たげな定春に留守を頼み、3人でゆったりと江戸の昼下がりを歩く。




いつもは常に五月蝿い万事屋一行だが、今回は銀時しか目的地を知らないのに彼が全く話さないのと、やはり睡魔がぬるぬると居座り続けている所為だろう、2人は静かに銀時に付いていくだけであった。





銀時の引き連れる眠気を引き摺った無言の3人の歩みが、漸く止まった。





俯きがちだった顔を上げると瞬時に大きな瞳を輝かせたのはさすが女の子といった所か、はたまた子供なのか…




「きゃっほー! 凄いアルっ! 桜が満開ネっ 」





「本当ですね、まだ桜がこんなに綺麗に咲いてる所があったなんて…」




「あぁ、昨日の夜たまたま花びらが落ちててな  



ほら、こうやって風が吹くと… 」




 声に応えるように一陣の春風が樹に吹き付ける_




すると先ほどまで静かに花を咲かせていた大木が大きく揺れ、咲き誇る花々までもが、





「桜吹雪ですか… 」




「ごっさ綺麗ネ! …でも、こんなに風が吹いたら花、なくなってしまうヨ… 」





「桜の花が散れば、きれいな新芽がでてきて、夏になるんだぜ。

  そんで、季節が巡り、来年は更に美しい花を咲かせるんだ。」





「また来年も、3人揃ってみにきましょうね。」

      





       「絶対、約束アルっ」



おだやかな日溜まりで誓いあう3人に降りかかる様々な試練を抱え、季節はゆっくりと、巡る___  

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