リク

□まじめな恋だから…  端日
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日本はあまりにも自分の意見を言わなさすぎる。
どうしてなのかは、吾輩とあやつとの考え方が違うから、わかりはしない。
だが、それでは回りに流されてしまう。
そんなことでは、この世界では生きてはいけない。


「私はアメリカさんの意見に賛成で…」
「またか日本!!自分の意見をいえ!」


ほら、また今日も。












まじめな恋だから…













「日本。」


びくんっ、と大仰に日本の肩が跳ねた。


「え、あ、スイスさん、何ですか?」


……そこまで驚くこともなかろう。


「最近お前は自分の意見を言わなさすぎるのである。いや、昔からそうだったが最近はもっとひどいぞ!」
「すいません……」


日本は吾輩から目をそらし返事をする。
……様子が変だ。


「どうした、日本?なにかあったのか?」
「い、いえ、何でもありません!!」


日本が大げさに首を振る。
絶対に怪しい。
だが問いただそうとしたところでイタリアがこちらに走ってくるのが視界に入った。


「にほーん!」


陽気な笑顔でこちらに手を振りながら走ってくる。
だが途中で吾輩もいることに気づき、イタリアは固まった。


「す、スイス…」
「ああもううるさい!!今は別に攻撃なぞせん!だからとっとと日本を連れて行けばいいのである!!」


全くタイミングが悪い男だ。
だが憎めないから余計に憎くかんじてしまう。

ふと横を見ると固まったまま動かない日本がいた。


「………?どうしたのだ、日本。
イタリアが待ってる。もう今日はひとまず行っていいのだぞ?」
「あ……はい、そうですね……。」


………………。


「イタリア」
「ふえっ?なあに、スイス。」
「前言撤回する。」


がしっと日本の細い手首を掴む。


「え……?」


そしてそのまま引っ張っていく。


「日本は吾輩が借りていく。」
「え、ええええ!?」


非常階段のほうへそのままずんずん歩いていく。

後には呆然としたイタリアただ一人が取り残された。







「どこに連れて行くきですか!?」
「人の来ない場所である。」


そういって、非常階段をずんずん上っていく。

やっと踊り場に着き、扉を開ける。


「寒……」


びゅうっと風が吹き込むそこは屋上だった。
秋の風が吹き込み、少々肌寒かったが、あまり気にせず外に出る。


「………ここは穴場なのだ。」
「え……?」


そして日本に外を見るように促す。
日本は従順な性格だから、怪訝な顔をしながらもフェンスに近寄っていった。




「うわぁ……きれい……。」




日本は景色を唖然と見ていた。

ここからの景色はさきほど言ったとおり穴場なのだ。
あたりにはたくさんの紅葉、さらには赤だけでなく、黄色や緑、さまざまな色の木々が見渡せる。
果物が成っている木もあるから、ほんのり良い匂いがする。
そして何より今は夕方だ。
その美しい色に赤い夕日の色が差す。

秋になり、寒いといって誰も訪れなくなった屋上。
そこには色とりどりのキャンバスが展開されているのだ。


「………きれいであろう?」
「………はい……」


スイスは、フェンスに身を乗り出して美しい景色に魅入ってる日本に近づいていく


「今なら聞いてもいいか?……何があったのだ。」


二人でフェンスに寄りかかりながらぽつぽつと口を開く。


「くだらないことなんです。ただ、あなたが遠い人に見えただけ。
今日、会議で指揮をとっていたでしょう?
そのときに、ああ、遠いって思ったんです。
ただ、それだけなんです。」
「………そうか。」


ここまで言われて、日本の気持ちに気づかないほど馬鹿ではない。
けれどなぜだろう……。
よくわからないけど、とても穏やかな気持ちだ。


「なあ、日本。」
「はい。」

「本音を言え。」

「……………。」
「吾輩に言ってないことがあるだろう。」
「でも…」
「吾輩はお前の本音が聞きたい。」


日本はフェンスをぎゅっと握りこんだ。
そして、夕日に照らされているからだけでないだろう、真っ赤な顔で吾輩に向き合った。


「私の本音なんて、きっとあなたは受け入れることなんて出来ません。」
「馬鹿にするな。お前の一人二人の本音を受け止められないほど吾輩の器は小さくはない。」


日本の頬には静かに涙が流れていた。


「好きです。
ずっとずっとお慕いしてました。」


胸の中に何か温かいものが広がった。これが愛なのかはわからない。
ただ、抱きしめたいと思った。


「日本………」


日本をきゅっと抱きしめる。
日本は顔を歪めて泣くのをこらえているようだった。


「今すぐには無理だというのはわかっている。
だけど、吾輩の前では自分の気持ちをきちんと伝えること。声を殺して泣かないこと。
これが吾輩のそばにいる条件だ。」

「はい………」


日本がひどく幸せそうに笑ったから、吾輩もつられて笑ってしまった。

久しぶりの笑顔は、とても温かいものであった。










まじめな恋だから、二人でゆっくり進んでいこう。














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