短編

□大切な思い出  独伊(?)
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イタリアという国の本当に大切な交友関係、というものは幼い頃に培われるものである。



























「ヴェ〜、今日は俺と兄ちゃんの誕生日〜!!」
「おう、バカ弟!
盛大にパーティー開こうな!!」


今日は俺の友人、イタリアの誕生日。
自分の誕生日で自分でパーティーを開くというのは何か変な気がしないでもないが、まあ、祝い事だ。


「私なんかもお呼ばれしてよかったのですか?イタリア君。」
「何いってるんだよ、日本ー!!!
日本は、俺の友達でしょー?
逆に来てくれなかったら、俺、泣くよ!?」
「そういうことだ、日本。」
「なんでジャガイモ野郎が答えてんだよ、このやろー!」


今日という日を祝わせてくれる、というのは、とても俺にとっても嬉しいことだ。

今日、イタリアの家に集まったのは、俺、日本、スペイン、ベルギー、という少ない人数。

あ、あと何故か…いや、別におかしくはないんだが、オーストリアも一緒だ。

こいつらにしては、数が少ないとは思ったが、


『こういう祝い事は、本当は本当に大切な友達としかやりたくないんだ。
だから、大分落ち着いたから、今年は兄ちゃんと俺の大切な友達とだけ祝いたいんだ。』


とイタリアがいうから、嬉しくなってしまった。

パーティーの飾り付けも皆でやる、というから、今は皆で飾りつけをやっている最中だ。


「ロマ、その花はもう少しこっちにした方がええんやない?」
「う、うるせー…こうかよ…?」
「不器用さんやなぁ、ロマーノ君は」
「何だよベルギーまでっ!」


あっちはあっちで楽しくやっているようだ。


「おい、イタリア。
この花はどこに……ん?イタリアー、どこにいるんだー?」
「あ、イタリア君ならオーストリアさんと出ていきましたよ。
すぐ戻ってくるそうです。」
「そ、そうか…。」


それならその間にでもトイレに行こうかと思い至った。
日本にそのことを話してから、会場をひとまずあとにすることにした。

廊下をこつこつと歩いていくとどこからか、話し声が聞こえてきた。

イタリアとオーストリアだとすぐに気付き、どこで話しているのかを探すと、イタリアの大切なものが閉まってあるらしい部屋の中だった。

なんだかんだ、気になっていたのだ。

別にトイレは切羽詰まってる訳ではないから、少しだけ…と思い、会話をきくことにした。

すまないイタリア、オーストリア、とは思うものの、好奇心には勝てない。


「……………を飾るのですか?」
「……うん。
今日のパーティーは大切な友達だけ、だから居てもらいたいの。」
「……いい加減に彼のことは」
「でも、違うんだ。
何が違うのかよくわからないけど、誰よりも大切だから、今どこにいるとか、どうしてるとか、関係ないんだ。
僕の、僕の大切な、誰よりも大切な」
「……勝手にしなさい、このお馬鹿さんが…。」


そういって、オーストリアがでてくる。

俺はあまりにとっさのことで、隠れることもできずにオーストリアとばっちり目があった。


「………盗み聞きとは関心しませんね。」
「…す、すまない。」


苦虫を噛んでしまったようにオーストリアは顔をしかめる。

すると奥からイタリアの声が聞こえた。


「ドイツ…いたんだ……。」
「あ、ああ……すまない…。
トイレに行こうとしたら声が聞こえてきてな…。」


気まずいような空気。
そんな空気に耐えきれなかったのかオーストリアはため息をついた。


「ああもう、私は会場に戻ります。
あとは二人でお話しなさいな。
それと、彼を連れてくるなら、早目につれてきて上げなさい。」


その言葉を聞いた瞬間にイタリアは跳ねた。


「いいの!?
本当に連れていっていいの!?」
「だからさっきからそういっているでしょう。」
「わーいっ!!!」


そう言ったかと思うとイタリアは俺の手をとった。

そうして、先程オーストリアと話していた部屋につれていかれる。


「えへへー。
いつかね、ドイツに紹介したいと思ってたんだよね。」


そう言って、部屋にある絵画を見せてきた。


「これは……」
「俺の……僕の大切な…………友達だよ」


そう言ったイタリアの顔は今までに見たことがない顔だった。

イタリアはこんな顔をするのか……。


「彼はね、神聖ローマって言う名前なんだ。」


今にも泣き出しそうなイタリアの笑顔。


「神聖ローマはね、とっても強くて、ちょっぴり恐いけど優しくて、僕のことをね、すっごく、すっごく大切にしてくれたの。」


辛そうに、幸せそうに彼を語るイタリア。


「今まで、一度だって忘れたことなんてなかったんだ。」


もう見てられなくなった。
イタリアの手をひき、絵画を片手に持ち、パーティー会場に引っ張っていく。

あ、トイレ、とは思ったが、別にトイレに行き、用をたしたかったわけでなく、実は二人のことが気になっていただけだったから、まあ、別に良い。


「ど、ドイツ!?
痛、手が痛いよっ!!」
「早く、彼をパーティー会場に連れていってやろう。」
「………え?」
「大切なんだろ?
それなら、そいつもお前が生まれてきたこの日を共に祝いたいはずだ。」


柄じゃないことはわかっている。
だけど、いてもたってもいられなくなった。


「それなら、きちんと準備のときも一緒に過ごすべきだ。」


パーティー会場の扉が見えた。


「ねえ、ドイツ……。」


突然、イタリアが止まった。


「……どうして?」
「何がだ?」
「どうして、」


それ以上は口にできないようだった。
イタリアの頬に次々と涙が伝う。


「どうし、て、…?」


何がどうして、なのだろうか。
よくわからないが、何となく表情でわかる。


「俺は、お前が大切だ。
だから、お前が大切にしているものは大切にしたい。
彼が、大切なんだろう?
それなら、皆で皆の大切を共有しあおうじゃないか。
それがお前の優先すべき大切なことなら、俺も皆も優先するさ。」


そして扉を開く。


「ドイツってやっぱり俺の思ってることが分かるんだね。」


こちらをみて、泣きながら微笑んだイタリアの顔は本当に幸せそうだった。


「あー!!!!!
このマッチョじゃがいも野郎!!!!!
なに人の弟泣かしてやがんだ!!!!」
「わああああああイタちゃんなに泣いとんのぉぉぉぉぉぉ!!??
ドイツが何か変なことでもしたんか!!??」
「わ、イタリア君大丈夫ですか!?
何かあったのですか?」
「何か悲しいことでもあったん?
そんなときはワッフル食べたら元気でるで!!」
「全くなにを泣かしているのですか!!!」


みんながイタリアの心配をしている。

ほら、言ったろ?
皆が皆の優先すべきことを優先するって。


「皆の大切はお前なんだ、イタリア。」


イタリアはとうとう泣き崩れた。

皆がイタリアを囲んで心配をする。
何かされたの、とか、何かあったの、とか、それぞれが色々と各々のやり方で心配をする。


「違うんだよ、幸せすぎて、泣けるんだ。」


そう言って、皆に彼のことを紹介する。

みんなは、きちんと話を聞いてやはり、イタリアの大切を共有してくれた。


「へぇー、なっかなかに男前さんやなー。」
「俺はこんなやつのこと知らなかったぞ。」
「お、なんや?すねてんか?可愛らしいなー!!」
「イタリア君の大切な友達ですか…。
とても良い方なんでしょうね。」



「うん!」



イタリアは満面の笑みで答える。


「イタリア。」
「ん?」
「生まれてきてくれてありがとう。
…きっと神聖ローマも、そう思ってる。」


イタリアは天使のように嬉しそうに笑った。








Happy Birthday
君がここにいる奇跡に感謝して。

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