ギャグ日 短編

□*数え切れない中から  太♀閻
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「あっ、ああっ、ひっ、んああっ!」
「閻魔…、閻魔…っ!」
「太…子っ、激し…っ、ああっ、あぅんっ!」



太子は、これでもか、という位に腰を叩きつけてくる。



「あっ、やめ…っ、壊れるぅぅぅっ!!んあっ」
「はっ…、そういう台詞、誰にでも言ってるんだろう?」


より一層激しくなる行為に頭の中が真っ白になる。


「ひぁぁっ、も、イクっ、あっあ、イクぅぅっ」
「あっ…、私も…っ!」
「ああああっ!!」


どくり、と愛液が大量に分泌し、膣内がうごめく。
その後に、何か暖かいものが中に吐き出される。



「は…、は…っ」



あまりの快感に、未だ頭が真っ白なまま、ベッドの上に力尽きて倒れ込んだ。


絶頂の余韻に浸る。


そして、生まれた姿のままでズルズルと這いつくばって自分のかばんを、ベッドの上から腕を伸ばして、なんとか引き寄せた。

そして、がさごそと中を漁り、タバコを出した。

あれ、ライターどこやったっけ。

そして、かばんの中のポケットに入れていたことを思い出して、ライターを取り出す。

よいしょ、と、なんとか体を起こし、ベッド際に腰掛ける。


カチッ


ライターに火を灯し、タバコの先端に点火する。

そして、口に含もうとしたところで、横から手が伸びてきた。



「こら。高校生がタバコなんてまだ5年早い」



そう言われ、タバコを手元から奪われた。
俺はムスっとして、タバコを奪った、生まれたままの姿の太子を睨む。



「俺、今、17だよ。」
「未成年が喫煙しようとしてたことは変わらないじゃないか。
それに閻魔は私からみたら、まだまだ子供だよ。」
「チッ。そのガキに欲情してる30越えてるオッサンも人の事言えないじゃん。」



俺は、面倒くさい奴に当たったもんだと内心うんざりしていた。

正直、金さえ払えばもう二度と会わない女子高生のことなんて放っておいてほしいものだ。



「なんと言おうと、駄目なものは駄目!」
「あーハイハイ。分かった分かった。
いいからお金頂戴よ。」



俺は、この今日初めて会った、客である太子に早く帰ってもらいたかった。



「ちぇー、風情がないなぁ。」
「毎日のように金もらってヤりまくってたら、風情なんてなにも感じなくなるよ。」
「………はぁ…。」



なんでこうも馴れ馴れしいんだろう。
俺、こういうタイプの人間、嫌いだ。



「ねぇ、閻魔はさ、好きな人とかいないの?」
「いたら毎日のようにさ、こんな仕事、やってなくない?」
「………。なんで、こんな仕事やってんの?」
「趣味。セックス大好き。」
「うわっ…。愛とかないのかよー…。」



もちろん、趣味でこんな仕事をやっているだなんて、そんなのは嘘だ。

父が失業し、母は寝たきり。
家族の生活費を一人で背負って生きている。
こんな仕事でなければ、食っていけるわけがない。



「愛なんて、俺にはいらないよ。」



もちろんこんな生き方でも、気高く生きている、という誇りがあるから、今日初めて会ったような人間なんかに弱味なんて見せるわけがない。

それに俺は、別に自分を可哀想だなんてこれっぽっちも思ってやしない。
だから、お門違いな同情をされるのが目に見えてわかっているのに、誰が話すのだろうか。



「愛なんていらない…なんて、駄目だよ、閻魔。」



太子は、何故か突然俺を後ろから抱き締めた。



「は!?え、なに!?」
「ねぇ、閻魔。私と付き合わない?」
「はいぃぃぃ!?」



こいつは何を言っているのだろうか。
全く意味がわからない。



「私、閻魔に一目惚れしちゃったんだ。
話してみても、やっぱり好きだなー…って。」



太子は俺を抱き締めながら話を続ける。



「俺、本当にこんなんだけど、閻魔を本気で好きになって…」

「あのさぁ!」



俺は、声を張り上げて、太子が話しているのを遮った。



「なにが望みなわけ。」



俺は冷たい視線で後ろを振り向く。



「なに、俺から金でも巻き上げたいの?
それとも、もっかいヤりたいの?
なんなんだよ、あんた、俺を馬鹿にしてるの?」



太子は悲しそうな顔をして、違う、違うよ…、と首を振った。



「私は恋をしたことがないんだ。でも、閻魔を見た瞬間に何かを感じたんだ。
私の本能が、この人だ!!って言ったんだ…!」
「は?何それ。」



俺は冷たく言葉を吐く。

好きだ、愛してる、なんて言われたのは初めてではない。
だが、こんな告白まがいなことをされたのは初めてだ。



「本当なんだ…っ!好き、閻魔が好きだ…っ!!」
「30越えたオッサンが恥ずかしくないの?」
「……ごめん、本当は私、25なんだ…。」



なんだその中途半端な嘘は。



「……なんで32とか言ったの。」
「だって…こんな事を言うつもりなんて本当はなかったから…家庭もあって、遊んでる奴って思われた方がいいかなー…って…。」



確かに俺は、こいつは家庭を持ってると思ってた。
そして、遊び人の方が楽だと思ってたのも事実だ。



「私、本当はこういう、知らない女の子と寝るの初めてで…。」
「え、何、援交初めてなの?」
「……う、うん。」



なんだこいつ意味わからん。



「あんた…変な奴だね。」
「よく言われるよ。」



にへへ、と笑った太子は、不覚にも可愛かった。

そうだな…マンネリ化してる毎日にも飽き始めてた頃だ。

丁度いいかもしれない。



「太子。」
「何…?」
「やっぱり俺、いきなり付き合うとかは無理。」
「で、ですよねー…。」



太子は今にも消えてしまいそうな程、ションボリとしていた。



「だから、友達から始めない?」
「うん………ええ!?」



太子は目を真ん丸に見開いて驚いていた。

あー、こりゃ楽しいわ。



「まず俺のメアド教えるよ。」
「………どうして?」
「ん、太子といると退屈しなさそうだから。」



そうして携帯を出そうと、カバンの中をがさごそと探す。



「たださ、勘違いしないで欲しいのは、俺、愛だのなんだのって嫌いなんだよね。ちなみに太子の馴れ馴れしいのもあんまり好きじゃない。
だから、見込みはないと思って。」
「うん!うん!閻魔大好きー!!!」

「話聞いてたの!?」



…やはり友達になるのは失敗だったか…?



「あ、ほら携帯。」



カバンから出てきた携帯を太子の方に向ける。
すると太子は慌てて脱ぎ散らかして、床に放り投げていた上着のポケットの中から携帯を取り出した。



「赤外線…っ!」



太子はどうやら携帯には不馴れなようで、慌てていた。



「あー、俺がやるから貸して。」
「え、ダメ…。」
「はい!?なんで!?」



訳がわからない。

早く済ませてしまいたいこちらとしては、うだうだやられると少々腹がたつ。



「いいから!」
「あっ…」



太子の手元から無理矢理携帯を奪う。

…………………え。



「何…これ。」
「うわああああごめんなさいっ!!!!」



携帯の待受画面には、何故かセーラー服の俺が写っていた。



「え……。」
「話聞いて!そうしたら誤解も解けるから!!!」



そうして太子は長々と言い訳を始めた。

なんでも、私の学校の友人である、妹ちゃんの兄であると。
そして、私の写真を見て一目惚れをしたと。
妹ちゃんの話を聞いて、あってみたいと思ったと。



「そういう訳です…はい…。」
「え、じゃあ何。俺と今日会う前に既に俺のことは知って、た…の……?」
「ごめん!本当にごめん!!」



なに、これ。
顔が熱い。



「なに、じゃあ本気で片想いしてたの…?」
「ず、ずっと…。」



太子は顔を赤らめる。
やばい、何これ…っ。



「俺がビッチってのも知ってて?好きなの?」
「うん…。何この拷問…。」



太子は恥ずかしさのあまりか、布団にくるまった。



「私もうお嫁に行けない…。」
「いやあんた元から嫁に行けないから!!!」



可愛い。
どうしよう、胸がいっぱいだ。

こんな風に誰かに思われたのは初めてで、ここまで好きになってくれたのも初めてで、ここまで受け入れてくれたのも初めてだ。




どうしよう。




「ごめん…気持ち悪いよね…。友達は…無理にならなくても、」
「だ、だめ!!」



俺は焦って、携帯を仕舞おうと手を伸ばしてきた太子の手をはじいた。



「だめって……なんで?」
「え……」



そういわれて、俺はおかしなことをやっていたことに気がつく。

あれ…なにやってんの…俺…?



「えっと…」



ど、どうしようどうしようどうしよう…!


「………あー…だめじゃないんだったら、赤外線しよっか。」
「あ、うん。俺やるから。」



てんぱる頭を今に戻して、赤外線で太子の携帯と通信する。



「…終わったよ。」
「わー!ありがとう!」



太子の手に携帯を戻す。

すると太子は服を着始めた。



「じゃぁ、今日は帰ろっか。」



そういわれて、ふと自分が裸のままだったことを思い出した。


や、だ…なにこれ恥ずかしい…っ!



「次に会うときはえっちなことしなくて良いよ。普通に友達として会いたいなー。」



太子は、何食わぬ顔で、おしゃべりしながら服を着る。



「それから、閻魔。」
「ん?」






「脈ありだって思ってもいいのかな。」







太子は、男の顔つきで、微笑んだ。

最悪。
落ちた。























数え切れない中から
君に見つけられた。





















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