書物
□†桜の記憶†序章
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まだ薄暗い明け方
久々に見た過去の夢は懐かしさよりもただ心が乱されるだけの痛みしかなかった。
「〜〜〜〜っ!!!」
乱された心は頭で理解するより早く涙になって現れる。見慣れた天井でさえひどく歪んでた。
†桜の記憶†〜序章〜
ぼ〜〜〜
「おいっ!ブス!!
まだ寝ぼけてんのかよ!」
穏やかな神谷家の食卓に剣心お手製の朝食が並ぶ。
ふわり、と腹の虫をくすぐる美味しそうな匂いに弥彦は目を輝かせていたが…
先程から起きてるのか寝ているのかわからないくらいにぼーっと庭を眺めている薫に一つため息を漏らし悪態をつく。
いつもなら弥彦が薫に"ブス"と言えば、
例えばそれが眠かろうが、例えばそれが怪我をしていようが、烈火の炎のように怒り狂う薫がいつもならばいるのだが、
今日に限ってはなんの反応も見せない。
皿にご飯やら味噌汁やらを分け取り、朝食の準備を整えた剣心もさすがに薫の様子がおかしい事に気付き薫に近づく。