陣 〜長編〜
□団結
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私は陣の後押しもあって早速吏将へ交渉しに部屋を訪ねた。
「吏将話があります!」
「入りなさい」
私は希望を胸に大会の事を切り出す。
「暗黒武術会へ私も参加させてください!補欠で出番はなくても精一杯力になります!お願いします!」
訴えるように声を張り上げたが…
「いきなり言われてももう書類を提出してしまった。残念ながらすまないな」
えっ?!
「補欠だけでは後から加入できないのですか!?…もし最悪でも応援として同行させてください!」
「だから言っただろう?今のお前は無力だ。来た所で誰の力にもなれない。」
「…!!でも…そもそも吏将はどうして私に大会の事言ってくれなかったのですか?!」
「…さっきから何故大会について知っている?お前は誰から聞いたのだ?」
眉を寄せながら静かな口調の吏将は動揺しているかにも思える。
陣を出さない方が無難だと思って盗み聞きした事を白状した。
「実は吏将がいなかったあの日、話声が聞こえたんです。それを聞いたらそのまま私だけ辞めるなんて納得いかなくて…」
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数秒間沈黙が流れた。
「そうか。あの時聞いていたならわかるだろう。お前は仲間からも期待されていなかった。自分でわかっているんじゃないのか?」
「…っでも!凍」
「陣にも愛想を尽かされているのにそれでもか?」
でも凍矢や画魔はあの時私の肩を持ってくれたし、陣は…本心では私の事を想ってくれてた。
そう言おうと思ってたのに。
「私も時折お前にも大会について話そうと思っていたのだが色々リスクがありすぎる。戦力もなければ仲間の信頼もない。そんな中言えるはずはないだろ?」
吏将の話はごもっともだけど私にはただの言い訳にしか聞こえない。
「そうですか…なら私が直接陣や凍矢に聞いてみます。もし本当でも本人から聞かなくちゃ納得いきませんから」
「傷付くだけだ。止した方がいい」
「いえ、大丈夫です」
サラリと部屋から出たが吏将は懸命に引き止めていた。
吏将はきっと私が【傷付く】事を恐れて黙認すると思ってたのか意外な行動に慌てていたのがわかる。
でも今は自信がある。
爆拳を覗いたメンバーは歓迎してくれるはず。
陣にもそう言ってもらえたんだもの。
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