流
□第6話
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その青年は、燃えていた
比喩的な表現ではなく
実際に炎を纏っている
「うおおおぉぉぉ!!」
周囲の空気を震わせんばかりの声を張り上げ、同時に炎の勢いも増していく
「ううおぉやかたさまああ!!この幸村、ぜんっりょくで此度の戦に臨みまする!!」
その叫びを聞いた者は、僅かに耳を抑えるだけで文句は言わない
慣れているのだ
それに何より、この青年ほどでないにしろ皆も同じような熱血漢であるのだ
「うむ!幸村よ!!虎若子の名に恥じぬよう戦えぃ!!」
しかし、その青年を超えるほどの迫力と声量を持った男がだん、と足を踏み鳴らした時はさすがに何人かがよろけた
「承知いたしましたあああ!!佐助ええ!行くぞおおお!!」
男の言葉を胸に受け止め青年はすぐ側にいた自らの忍の名を叫ぶ
「そーんな熱烈に名前呼ばれると俺様照れちゃう」
少しも照れていない様子で言った言葉には、いくらかの呆れと疲労が見える
「殴り合わないだけマシだけどさ、ほんっとさすがにうるさいんだよねー……」
「む?何か言ったか!?」
忍の呟きは、幸か不幸か主の耳には届かなかったようだ
人の小さな呟きを拾うほど、この男は周囲に気を使っていない
それを忍は分かっていて、こうやって所々で自分の本音を言ったりする
「何でもないですよ、っと。ていうか聞こえても聞かないでしょうし」
馬に飛び乗った青年に倣い、すぐそばの木の枝に身体を移した