長編

□距離感
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ガジルの優しさを知ってから一夜。

レビィから以前のような恐怖心や嫌悪感を感じなくなり、ガジルは不思議に思った。

それどころかガジルよりも早起きで、洗濯・食事・水汲みなどを済ませて静かに待っていたのだ。


「なんだこりゃ……。」

「お、おはようガジル。えっと……何か駄目なとこあった?」

「駄目っつーか、どういう風の吹きまわしだ?」

「えっと……お礼。昨日助けてくれたから。」

まっすぐな瞳でガジルを見上げるレビィ。

「別に助けたつもりはない」とぶっきらぼうに言い放っても、レビィは笑った。

「それでも嬉しかったの。だからお礼がしたくて……。それに……。」

(知りたいと思ったの。ガジルのこと。)

その言葉を飲み込みレビィはまた笑う。

そんな彼女を黙って見つめていたガジルだったが、どかりとその場に座り手を合わせた。

その仕草が普段の様子からは想像がつかなくて、レビィは思わず笑ってしまった。

気に障ったのか一瞬ムッとしたガジルだったが、すぐに食事を始めた。

「……ど、どう?美味しい?」

いつもはなにかと文句をつけられるレビィ。
だけど今日のは美味しく出来たはず。
ドキドキしながらガジルの反応を待つ。

だがガジルはいつもどおり黙々と食べ続けている。

(やっぱり美味しくなかったのかな……?)

しょんぼりと肩を落とし、後片づけをしようとその場から去ろうとした時。

「おい。なにどっか行こうとしてんだ。」

「え?なにって……片づけようと思って……。」

「そんなん後でもいいだろ。せっかくの美味いメシがまずくなる。お前も早く食っちまえ。」

「えっ……。」

それだけ告げると、ガジルは顔を背け食事の手を進めた。

″美味いメシ″。

ガジルは確かにそう言った。

(良かった……美味しいって言ってもらえたんだ……。)

たった一言だったが、レビィにとってはすごく嬉しくて、胸の奥からじんわりと暖かい何かが溢れてくる気がした。

レビィは小さく「いただきます。」と呟き、食事を口に運んだ。
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