長編
□生け贄
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「次の生け贄はお前だ…レビィ。」
その言葉を聞いた時、私は頭が真っ白になった。
生け贄。
村はずれに住むという竜神様に捧げるための。
それは私の村に代々伝わる儀式のようなものだった。毎年一度だけ竜神から村の巫女へと伝えられているらしい。
それは作物だったり動物だったり着物だったり……時には人間だったりする。
生け贄となった者は帰ってこない。その代わりに村には災厄が降りかかってこない。
そうやって村は平和を守っていた。
「…レビィ…気を確かにもて。お前は頭が良いし冷静な所もある。竜神様を怒らせなければ…きっと大丈夫だ。」
巫女であり姉妹のように育ってきたエルザが、私を抱きしめて落ち着かせてくれた。
「…大丈夫だよエルザ。私は大丈夫。村のみんなをー…叔父さん叔母さんをよろしくね。」
安心させるために笑顔を向ける。
亡くなった両親の代わりに私を育ててくれた叔父と叔母にも、笑顔で挨拶する。
きっとこれが最期。
私は思いきり抱きしめて、「今までありがとう…。」と震える声で別れを告げた。
「じゃあみんな。元気でね。」
一言だけ告げ、振り返ることなく歩き出す。
背後で村の人達や叔父さん達の泣き声が聞こえたけど、私は歩き続けた。
溢れ出しそうになる涙をこらえて…。