short dream

□おやすみのキス
1ページ/1ページ

「ねー、りんー?」
「どーした?」



今日は塾も学校も休みだ。寒い冬の夜には、こうやって二人で抱きしめ合って暖まるのも悪くはない。


燐とは付き合ってもう4ヶ月ちょい。たまたま両想いで、私の気持ちを知った志摩君が燐にチクっちゃって、私の感情を知った燐は私に告白してきてめでたく(?)恋人になりました。


今日はたまたま雪男くんが任務で居なかった。
二人で勉強を見てもらおうと思って部屋に来たんだけど、急だったもので居なかったのだ。


「なんか私きんちょーする」
「うん。俺も同じ」


私を後ろから抱き締める腕をきゅうと強くした。

夢見がちな私でも、漫画でのあのトキメキは現実にはぜっっっったい無いと思ってた人だけど、いざ恋愛! となると漫画以上にどきどきが止まらない。



「燐、あったかいね」
「そりゃあ、抱き締めてるから」

「ねー燐?」
「なんだ?」
「呼んでみただけ」
「なんだそりゃ」

くつくつと喉で笑ってから、私の首筋に顔を埋める彼。
その黒い髪の毛を私はわさわさと触る。



「ねー燐?」
「んー?」



「好きだよ」
「じゃあ俺は愛してる」
「でも私は燐よりももーーーーっと愛してる自信あるよ」
「いや、俺が勝つな」

「そうなの?」
「そうなの」


彼と居ると心地が良いのか悪いのか分からない。
でも、一緒にいて安心する。
でも、一緒にいてドキドキする。

会いたいって思ったらいつの間にか目の前に居て。
触りたいって思っても彼が隣に居なかったら、泣きそうになる。
でも、触られたら、すごく緊張する。



恋愛は、矛盾だらけだ。




「雲雀?」
「なーに?」

「呼んだだけだ」
「何でよー」
「仕返しだよ」


ちょっとだけムッとした私は、燐と向き合ってから、彼の首に巻き付いた。



「燐の匂いがする…」
「そりゃ、俺だからな」

「ねー?」
「何?」
「キスして?」


触れるだけのキスが、雪のように落ちて消えた。
唇に残る燐の温もりが余韻する。それをもう一度求めたくて、次は私からキスをした。



「んっ…」

ちゅ、という音が部屋に響き渡る。なんとなく耳に残って擽ったい。
私の胸の鼓動は異常なほどに加速していた。長いキスに名残惜しく離れる唇と唇。私はそのまま彼の腕におさめられて、耳が彼の胸のところにある。

とくりとくりと聞こえる鼓動。私と同じくらい速くて、燐も同じなんだなぁと胸が暖かくなった。


彼の大きな男らしい手が私の手にからまさる。
そのまま手合わせのようになる私の右手と、燐の左手。一関節以上大きい彼の手は私よりも全然ちがかった。


「燐の手おっきいね」
「お前の手は小さいな」
「昔からだし……」
「…まあ身長小さいし、な」

「私だって、あと10センチ位、いや15センチ位高かったら、ナイスバディのボインボインなお姉さんだったはずなのに!」
「そっちの話はしてねぇだろ」


けらけらと笑われて、私もつられて笑った。
この温もりがちょうど良くて、眠たくなる。燐の腕の中でうとうとしてたら気付かれたようだ。



「眠いのか?」
「うん、でも…起きてる」
「無理するなよ、ほれ、俺のベッド貸すから寝ろよ」
 
私の頭をくしゃりと撫でて顔を覗き込む彼。



「だって…燐と話せないから、時間が無駄になっちゃう」


少し驚いたようにしてから、ふわりと目の前で笑う彼の笑顔がとても格好良かった。
するとまた髪の毛を触った。


「俺も側にいるから」
「…側って?」
「一緒に、寝るか?」
「それなら許す」


私を抱きかかえて歩く燐。
ふわりと体が浮かんで、そのリズムに少し揺られてから柔らかいベッドの中に入れられた。

部屋の電気を消して、彼もベッドに潜り込む。

抱き締められてから、優しく深いキスをした。
人の肌って、こんなに柔らかいんだ。



ふふ、と笑ってからまた目を瞑る。私の頬を撫でる彼の手。



「おやすみ、燐」
「おやすみ、雲雀」







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ