BOOK テニプリ
□焦燥
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「謙也はウチが誇るスピードスターなんやで」
そう、嬉しそうに自慢する我が部の部長の横で、俺は仏頂面をする。
「な、謙也?」
「……おん」
こいつの得意そうな顔を見れるなら、それでもかまわないとは思うけど。
なぁ、白石。
ほんまは俺、スピードスターなんて名前、どうでもええねん。
だから、はよ気づけよ。俺は長く待てへんの、知っとるやろ。
くそ、苛々する。
「謙也」
白石は俺に、笑いかける。ただ、微笑む。
嗚呼、だから。
甘い声で囁くな/もっと言って
俺の名前を呼ぶな/百万回呼んで
ほっといて/俺をずっと見ていて
お前が嫌いや/ずっと好きだった
スピードスターなんて名前は、いらないから。
お前に、触らせてくれ。