BOOK テニプリ
□ポッキーゲーム
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「なあ、ポッキーゲームせえへん?」
何気無しに言った白石のこの言葉が、全ての元凶だった。
「ほら、今日ポッキーの日やないか。ここにポッキーあるし。ポッキー会社の思惑に乗ってしまうんのは、しゃーないってことで」
「―――あのなぁ」
深く息を吐き出す。少し落ち着け。そりゃ白石とは、学年でも部活でも一番仲がいい、友達だ。だけど、
「何が悲しくてムサ苦しい男とポッキーゲームせなあかんねんっ!」
俺の声に驚いたのか、窓の外の小鳥がびくっ、と身体を揺らし飛び立った。部室で二人きりだからいいものの、こんな冗談真に受ける奴がおったらどないすんねん。
「ほー、謙也は俺のことをムサ苦しい思ってんのか」
俺のムサ苦しい男発言に腹が立ったのか、どこからか取り出したポッキーの箱を片手に、白石が青筋を立てて俺を睨んだ。
え、ちょっとこのアングルなんか怖い。謙也は慌ててフォローを入れる。
「いやいや、白石は女の子にもぎょうさんモテるべっぴんさんやないかムサイなんてそんな。売り言葉に買い言葉っちゅーか」
「へえ。なんやそれ、言葉に棘があるなあ」
「そ、そもそもお前が悪いんやんけ! いきなりポッキーゲームなんてオモロない冗談言うから……」
「冗談、なあ」
口元を歪ませ白石が俺の言葉を反復する。目は笑っていなかった。
「すまんなあ、オモロないことしか言えなくて」
「あ、ああ。別に俺は白石のギャグセンスにケチつけてるわけでもなくて――……って、なんやその手っ! さり気にパッケージはずしとるんやないでっ!」
白石は無言のまま、ぺりぺりとポッキーの包装を器用な手つきで剥がしていく。おお、こんなとこまで無駄のない完璧な手つきや。
――って、ちゃうわ! そうやなくて。
「お、お前本気でやるんか。ポッキー」
「まさか。何の面白みもないつまらん冗談やで」
「その割にはポッキー開ける手は止まらんし、なんか顔怖いで……?」
「謙也の意識過剰やろ」
「んなわけあるかっ! ボケッ!」
そして白石は笑って(金ちゃんがちびりそうなレベルの怖さ)、俺にゆっくりと近づいてきた。
「ポッキーゲーム、開始や」
……ええっと。それでこれ、どんな状況やねん。