BOOK テニプリ
□はろうぃん
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「柳沢」
「なんだーね」
「今日なんの日かわかる?」
「え」
「ということで、イタズラをします」
「―――はあっ」
十月三十一日、午前零時。
そうして俺は、クラスメイトで同室の木更津淳に、押し倒された。
「ちょ、待つだーね! 一体なんのことだーねっ!」
淳はくすくすと笑って、柳沢のベッドに乗り込んできた。深夜のため、寮の外は当然真っ暗で、薄い月の光と、淳が点けた部屋の灯りだけがぼうっと淳を映しだす。
「だから、柳沢に悪戯するんだってば」
「なんでっ?!」
「お菓子くれないんだもん」
「意味わかんないだーねっ!」
うわ、と声が出た。淳が俺の顔を触ったからだ。壊れ物でも扱うような仕草にくすぐったさを覚える。くすくす、と笑う淳の視線も、くすぐったい。恥ずかしくなって顔を背けようとするが、淳がそれを許してくれるはずもなく。
「言ったでしょ? 悪戯するって」
「は、恥ずかしいだーね! それにもう今日は遅いだーね!」
「ううん、遅くはないよ。一日が始まったばかりだもん」
「へりくつ!」
「どんな言葉も、好きな人に言われるとなんだか嬉しく感じるよね」
す、好きな人って、なんだーね!
いつもより大胆に話を振る淳に、目眩を覚える。いやいや、そんなキャラじゃなかったって。――……いや、こんなものだったっけ。
「って、どさくさに紛れて触るんじゃないだーねっ」
「くすっ」
どうしたものか、と頭を抱えていると、淳の手が寝巻き――寮なのでジャージ姿だが――の中に忍び込み、肌を撫でるように触れた。自然とジャージは捲りあがり、柳沢は十月の夜だというのに、半裸の状態になってしまった。それは驚くほど寒い。
「さ、寒いだーね! 淳、いい加減にするだーね」
「そう。でも、悪戯され始めたココはなんて言ってるのかな」
「エロオヤジ発言だーね! なんでそんなとこ触……ひぁ」
感じた? と笑いながら反応を確かめるように見てくる淳が恨めしい。声に出して反論しようとするが、乳首を触られている為か、うまく声が出ない。
覚えてろっ! という意味をこめて目の前のクラスメイトを睨みつけるが、涙目で訴えても、何の意味などない。
―――むしろ喜ばせるだけ、というか。