BOOK テニプリ
□本音が聞きたい
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「なんや、財前は謙也に堕ちたんか」
「お、おちっ……」
ぶはぉっ、と飲みかけの麦茶を噴出す。何言いだすんやこの部長。
「やって最近、クラスでもやけに機嫌ええねん謙也。こりゃなんかあったとしか思えへんやん」
「――それがなんで俺につながるんや」
「そりゃ、謙也があんな元気になるんは財前絡み以外ないやろ?」
「……」
財前は沈黙する。白石はそんな財前をじーっと見ては、はあ、と息を吐く。眉を下げては残念そうに言った。
「そおか……。とうとう財前が謙也のもんになったんか」
「何のことや、」
「恋人になったんやろ? どーせもう大人の階段上ってるわなあ。全く、アイツは手ぇ出すんも早いんやから」
「っ! まだそんなことになっとらんわ!」
「――へ?」
しまった。
慌てて口を押さえる。自分は何を言ったのだろう。くそ、この部長が変なこと言うんが悪いんや。俺は悪くない。
案の定、白石は毒気を抜かれたような顔をした。
「まだやっとらんのかお前ら」
「――生憎、なんもないっすけど、それが」
「……いや、びっくりしただけや。そうかー、まだなんかー。そりゃ意外やわー」
「……そな意外なんすか」
「そりゃそうや。俺も謙也も若いんやー。そんくらいしたいやろそりゃ。付き合うても謙也が手ぇださへんなんて異常や異常」
ほんまに付き合うとるんか、と白石は真顔で聞いてきた。
知らん。
俺がそれを聞きたいくらいや。
その言葉は、胸のうちに隠したけれど。