BOOK テニプリ

□虫歯。
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「うう……」

「ユウくん元気だしぃ。大丈夫やで、一本くらい」

「せやかて、銀歯あったら小春に嫌われてしまうやないか……」

「馬鹿ねえ、ユウくんのこと嫌いになるわけないやん」

「こ、こはるううううううううううううう!!」


 部室の扉を開けると、いつものように小春さんとユウジ先輩が抱き合っていた。まあ、なんというか正直キモい。

 というか、この人は本当になんにも分かってない、と溜め息を吐く。いくら小春さんと仲がいいって言っても、俺と付き合うとること忘れてるんじゃないだろうな。

 どろどろとした感情をユウジ先輩にぶつけ、そのまま押し切ってみたらあっさりユウジ先輩からオーケーが出た。そうして、俺は先輩の彼氏になって今に至る。――……なのに、相変わらず小春さんばっかとつるんでて。


「あ、財前。なんやお前、俺と小春の仲を邪魔しにきたんか」


 しっしっと手を振るユウジ先輩。それもいつものことといったらいつものことなのだけど。今日はそれさえも腹が立つ。


「ユウジ先輩、なんかあったんすか」

「そうそう、この子虫歯できてなあ。奥歯が銀歯なん気にしてんのや」

「小春っ、余計なこと言うんやないでっ!」

「へえ……ユウジ先輩、ここのところ一緒に善哉食いに行かんかったんも、やたら菓子を避けていたんもそれが原因だったんすか?」

「お、おま、財前、今日はなんや顔怖いで……」

「それ、俺に見してくれません?」

「はあっ?! 何言うとんのや、自分――――んっ」
 


 抵抗する先輩を押しつけて、無理やり口を開かす。
 
 あらぁ、という小春さんの声が後ろからしたけれど気にしない。大体自分は、その虫歯で俺やなく小春さんが嫌うとか考える、その思考そのものが許したないんや。
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