BOOK テニプリ
□ずるい狡いだけど好き
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ずっと、好きだった。
多分、お前が思っている以上に、ずっと。
自分には絶対に向かないであろう、その瞳に、俺は心底惚れていた。
(ずるいわ、全く)
いっそ自分から襲ってやろうかと、何度も思ったりもした。だって、隣であんまり無邪気に笑うのだから。
この恋が叶うことなんて、ない。
分かっていても現実はつらい。
恋なんて、――しなければ、よかったのに。
「白石ーっ、今日一緒に帰らへんかー」
「アホ。今日は補習あるやろお前」
「えー。せや、補習さぼればええねん。あの禿げ頭のおっちゃんの話なんてかったるくて聞いてられへんし」
「あかんわ。謙也部活できなくなるで」
「……それは困るな」
ううん、と腕を組んで唸る謙也を見る。相変わらず、ええ顔やな。きっと女の子にもモテるやろうに。
「でもええねん! 腹痛くてしゃーないっつって補習明日にしてもらうわ。俺、白石と一緒に帰りたいし」
「お前……。なんで俺となんや、明日でええやろ別に」
「今日やないとなんや機会逃がす思うて」
「――まあ、べつにええけど」
俺の答えにそか! とはにかむ謙也が眩しくて、俺はふいっと顔を下に向ける。こいつは俺の気持ちに一ミクロンも気づいてないんやろな。俺が、謙也のこと好きなんて、思ってないんやろ。
(ずるい)
「? 白石、なんか言うたか」
「いや、なんにも。ほな帰ろか」