BOOK テニプリ
□善哉食おう。
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「善哉おごるで」
「……はあ?」
嬉々として目の前にいるアホな先輩は、そう言った。
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俺は甘い食い物が好きだ。特に、善哉。
遠山あたりが「甘党」なら、まあ別段違和感なんてないだろうけど、俺みたいな奴が善哉好きなんておかしい、ってよく言われる。だって好きなんや。しゃーないやろ。
そんな善哉を学校の帰り道に買い食いするのが、俺の密かな楽しみだった。
「……でもなあ」
「おん! なんや財前。ここのは口に合わへんのか」
「いえ、むっちゃおいしいっすわ。って、そうやなくて」
「なんや、だったらはよ食べ。俺が奢るんや、遠慮せえへんでええよ」
「……だから、俺が言いたいんは、そういうことやなくて」
なんであんたが、俺と一緒に善哉食ってんすかってことですよ。
ユウジ先輩や小春さんが、最近この辺でおいしい甘味処できたと噂をしていた店。今度一人で寄ってみようかと思っていたのに。何故か今、俺はこの忍足謙也と一緒に甘味処で善哉を食っていた。
「やって、財前が言い出したんやん。善哉おごれって」
「いつの話ですかそれ」
「うーん……。いつやったかなあ」
ほんまアホやな、この人、と呟く。そんな覚えてへん約束、律儀に守るんすか。
「まー、俺はどうでもええねん。財前とこうして善哉食えるんなら、奢りでもなんでもしちゃるわ」
「……謙也さんは暇人かなんかですか。俺みたいんと一緒に居りたいなんて暇やからでしょ」
「俺一緒に居りたいとは言ってへんで。お前、もしかして俺と一緒に居たいんか!」
何故そうなる。
はあーっ、と深い溜め息を吐く。これでは美味しい善哉の味もゆっくり味わえない。人間アホで自意識過剰って、どうしようもないな。
「俺は謙也さんと一緒に居りたくなんてないっすわ。善哉やって、一人で食いにくるはずやったのに……」
「うわ、手厳しいわー」
「あんたって人は…っ。なんかムカつきますわ…っ」
「なんや、財前。眉に皺よってるで、ほれスマイルスマイル」
スマイルゼロ円なんちゃって、ってなんやそれ。この人、ヒトを馬鹿にするにもほどがあるやろ。喋るたびに苛々してくる感覚に頭痛を覚える。