BOOK テニプリ
□始まりのよかん
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この四天宝寺中テニス部で、三年を差し置いて二年がレギュラーなんは、俺だけやった。
それが気に入らないのか、三年の先輩たちは俺を目の敵にする。
嫌がらせは、まあ、今まで何度かあった。
(俺が、こんな性格やしなー)
それでも、今更どうこうしようなんて思わない。
自分が生意気なのは分かってるし。
相手するだけ、無駄やろ。
「なのにあんたって人は……」
「おん」
「『おん』やないやろ! どうしてくれはるんっすか」
「やって――」
ぶうぶうと口を尖らせ、いじける謙也さん。頭痛がしてきた。あほか。無性に腹が立ってくる。
「謙也さんは関係ないやろ。なんで口出してくるかな、ほんっま、この人はぁ……」
「そうは言ってもな、財前を悪う言う奴がおったら我慢できひん」
それに関係ないわけないやん、俺、財前のこと好きやもん。
頬を膨らませながらさらりとそんなことを言うくせに、肝心なことは何も触れてこないこの人のことを、俺はあまり好きではない。
「考えてみい。あんたが先輩たちと対立したとこで、何にもならへんやん。俺やて騒ぎ起こす気はないんやで。ほっとけばええのに」
「じゃあ財前はええんか? あいつら意地でもお前のこと認めない気やで!」
「別に、どーでも」
そう言ったのと同時にどんっ、と謙也さんが音を立てながら俺の胸倉を掴む。
謙也さんの目の色が変わっている。本気で怒っとる時の目だ。
「財前、お前はそれでええかもしれへんな。でもな、あいつらだって立派な仲間なんや! 仲間が仲間信じられんなんて悲しいっちゅー話やで。だから、」
「だから、先輩たち殴ったんすか」
「……」
謙也さんは急に黙り込む。
全くこの人は、さっきから相変わらず言ってることとやってることが正反対だ。どっかおかしいんちゃうか。
先輩たちが俺をよく思っていないのは、自分にも否があると自覚している。
ねえ、謙也さん。
あんたは、先輩たちを殴るんやなくて俺を殴るか退部させるかしとけばよかったんや。