BOOK テニプリ
□好きだから、
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おかしい。
何かが、おかしい。
「俺が何したっていうんや」
つい先日のことだ。後輩の財前光が告白してきた。
俺は、最初こそ逃げていたけれど。
あいつが本気で俺を思ってくれていると分かったから、俺も本気で向き合って。
そして――付き合うような関係になって。
「なのに、なんで俺を避けるんやろー……。」
財前は、俺を好いてくれている。それは分かっている。
なのに、最近のあいつときたら。部活で顔合わしても何にも言わないし、折角こっちから声をかけてもどこか上の空だ。
「喧嘩もしてへんのに、なんで」
喧嘩はしてない、と思いたい。機嫌悪くしたらしばらく根に持つ奴だし。関係はいたって良好。キスだって、身体に触れ合うことだって。
思い当たることはないんだ。なのに、なんで。
「もう一週間はおあずけやないか」
いい加減、財前とちゃんと話したい。ちゃんと目を合わせて、話をして、一緒に笑って、デートに行って。
デート。
そんな甘い響きも、ここのところさっぱりない。
だったら、
(誘って、みよかな)
あいつを誘うのは初めてだけれど。財前が好きだから、もっと会いたいと思う。別になんのこともない。フツーのことや。