友雅さん・長編

□記憶の中の貴方
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ある日、あかねは友雅と天真を連れて、町の散策に出掛けた。
「…なんでこいつと一緒なんだよ?」
先程から天真は文句ばかり垂れている。
天真は初めて会った時から友雅が気にいらなかった。
いや、気にいらない、ではない。
はっきり言ってしまえば嫌いの部類に入るのだ。
本人いわく、B型男とB型男は相性が最悪なんだそうだ。
…こちらでは血液型なんて分からないから、本当に友雅さんがB型かなんて分からないじゃない?
あかねがそう指摘すると…天真に思いきり殴られてしまった。
あかねにはよく分からないが、天真のコンプレックスを友雅が刺激…するらしい。
だから、いつもはこのメンバーで、という事はないのだが、今日は天真が今日の散策を一緒にさせてくれ、と言ってきたのだ。
まだ文句をブツブツ言っている天真に、流石のあかねも少しむっとしてしまう。
「だから、さっきも言ったでしょう?今日は友雅さんと先に約束していたんだって」
「だ、だけどよー…最近お前、友雅とばかり出かけるよな?」
天真はズバリと尋ねた。
「…え?」
あかねは思わずドキリとしてしまう。
確かに最近は友雅と出かける事が増えた。
それは、あかねの恋心ゆえ、だった。
やはり好きな人のそばにいたいし、もっともっと彼の事を知りたいと思うのは当たり前の事だ。
だから、散策を理由に、友雅にお願いをしているのだ。
だけど、流石にそこまでを天真に言う事が出来ず、あかねはぷいと横を向きながら答えた。
「た、たまたまよ」
「そうかー?怪しいなぁ?」
天真があかねの顔を覗き込むように尋ねてきた。
いい意味でも悪い意味でも、感情が顔に出やすいあかねは、どうしたものか、と困り顔になった。
と。
「あまり、神子どのをいじめるものではないよ、天真?」
少し離れたところでやり取りを聞いていた友雅があかねを助けるように言った。
「いじめてねーよっ!てか話の中に入ってくるなよなっ!」
「…話題が私の事のようだが…本人が入ってはまずい話なのかね?」
「そ、そうじゃないけど…」
「ならいいだろう?それに、いじめてはいないようだが…神子どのは困っているように見えたのだが…」
「そ、それは…」
「話の内容はともかく、八葉が神子どのを守るものであって、困らせるような事をしてはいけないと思うよ?」
「…って、なんでお前に説教されなきゃならないんだよっ!」
「おや?私は説教などしていないよ?私みたいな人間が、人にそのような事、出来る訳ないし、ねぇ」
「じゃあ話の中に入ってくるなよなっ!」
「だが、神子どのの愛らしい顔を曇らせるなど…私はそのままにしてはおけないからねぇ」
ああいえばこう言う。
百戦錬磨の友雅に言葉の戦いで勝とうなど、天真でなくても無理な話な訳で。
「…勝手にしろっ!」
結局言い負かされてしまったのだ。
そして、そのやり取りを見ていたあかねは。
「あはははっ」
可笑しくて思わず笑ってしまったのだった。
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