友雅さん・長編
□王様と姫君
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橘家に、待望の女の子が生まれたのは、5年前。
家の主である友雅の喜びはひとしおだった。
「そんなに子供が好きだったなんて知りませんでした」
妻にそう言われ、友雅は苦笑してしまった。
「君の血を分けた子供だと思うと、喜びもひとしおなのだよ」
「…そう言って、友くんも甘やかしてますよね」
あかねは呆れた顔をした。
「しかたないよ、だってあんなに可愛いのだがら」
きっぱりと言い切る夫を見て、あかねはため息をついた。
いつになっても、友雅さんには口では敵わない。
だから、あかねは心の中で誓ったのだ。
…私が厳しく育てなきゃ。
そして、六花(りつか)と名付けられた愛娘は、両親と兄の愛情、特に父親は溺愛だったが、のもと、スクスクと育っていった。