友雅さん・長編

□想いの行方
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「友雅さんっ、ごめんなさいっ」
「いいよ、あかね」
友雅は愛おしそうにあかねを眺めながら言った。
「あ、先生、すいません、お騒がせしまして」
保育士がきょとんとしているのに気がつき、あかねが申し訳なさそうに言った。
「今日、少し仕事が長引いちゃって…本当は彼と一緒に来て、ご挨拶をと思っていたのですが」
「あ、あの、では、この方が友之くんの?」
保育士の問いに、あかねは照れくさそうに頷いた。
「はい、友之の父親です。…、近々籍も正式にいれますので、あの、何か手続き変更などがありましたら…」
「…」
保育士は友雅をじっとみた。
一体どのような経緯でこんな人と知り合い、子供を作ったのか。何故別れていたのか、どういった経緯でヨリを戻したのか。
ゴシップ記事のような質問が、次々と浮かぶ。
「あの、先生?」
あかねに呼びかけられ、保育士ははっとした。
「あ、は、はい。書類ですね。明日までに用意して、友之くんにもたせますわ」
「よろしくお願いします。それじゃぁ、これで」
あかねが会釈をした。
「さあ、お家に帰るか?」
友雅が友之を抱き上げながら言う。
「うんっ」
友之が大きく頷く。

寄り添いながら帰っていく三人の姿は、幸福な家族そのものだった。
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