友雅さん・長編

□想いの行方
38ページ/41ページ

だが、彼は龍神であるのだ。それくらい知っていて当然か、と友雅は思い立ち、苦笑した。
「やれやれ、神は何事もご存知か。…、それで?」
「そなたの決意の程を確かめに」
白龍はじっと友雅をみつめた。
友雅もその視線に負ける事なく、白龍を静かに見つめた。
しばらくそうしていると、白龍がふわりと笑った。
「神子を頼むぞ」
「言われずとも」
友雅のその返事に、白龍は満足したように微笑んだ。
「神子の幸せの為に、そなたには向こうでの生活の安定を約束しよう」
白龍はそう告げると、いずこかへ消えていった。
友雅はそれを見守った後、部屋に戻った。
あかねはまだ夢の中のようだったが、何か寂しそうな顔だった。
「ともま…ささん…」
呟かれる自分の名前に、つきりと胸が痛む。
そして、ここに、側にいることを解らせる為に、あかねを抱きしめるようにして、横になった。
友雅の温もりと香りを感じたのか、あかねがほっとした様子になる。
この安らかな笑顔を守るのも曇らすのも、己次第。
ならば、二度と曇らす事はないと、友雅は誰でもなく自分に誓ったのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ