友雅さん・長編

□想いの行方
37ページ/41ページ

「これからは、不安も不満もお互いに口にだしていこう」
それで不安がぬぐえるならば。
「はいっ」
あかねは友雅にしがみつくように友雅の懐に体を押し当てた。
その時、あかねはある事を思い出した。
「友雅さん、ともくんは?」
そういえば、友雅と共にいた友之の姿が見えなかった。
すると、友雅がくすくすと笑った。
「蘭どのが連れていったよ」
「蘭が?」
あかねが部屋に戻ってくる少し前に、蘭が友之を呼びに来たのだ。
「今日はパパとママをふたりきりにしてあげようね」
「え?」
友之が目をぱちくりとさせる。
「今日は蘭ちゃんとおねんねしようよ?」
「うんっ」
そうして、友之は嬉しそうに、蘭について行ったらしい。

「だからね?」

友雅はそう言うと、あかねをコロンと床に押し倒した。
「とっ、とも…」
「…、黙って?」
友雅はそう言って、自分の人差し指をあかねの唇に押し当てた。

「…愛してる」
「私も…」

友雅はあかねに覆い被さるように横になり、そして、深くくちづけた。
そして、今まで体にくすぶり続けていた熱情の赴くまま、あかねに想いの丈をぶつけたのだった。


友雅がふと目を覚ます。
隣に温もりを感じ、はっとする。
「…、ああそうか…」
隣ですやすやと眠るあかねを見て、ほっとする。
この温もりが、私の宝。
友雅があかねを抱きしめた時だった。
庭に何かの気配がした。
一瞬人かと思った。
だが、それならば頼久が気づかない訳がない。
友雅がそろりと外を伺う。
するとそこには、異国風の鎧をみにまとった青年がたっていた。
「…、何者だ?」
そう尋ねてみたが、友雅は既にこの青年が誰なのか分かっていた。
「…、そなたに話があってな。地の白虎」
友雅を地の白虎と呼ぶのは、鬼の一族と、そして、龍神。
「神が私に何か用ですかな?」
友雅は白龍に尋ねた。しかし、これも分かっていた。
「神子の事だ」
白龍の答えに、友雅はやはり、と思った。
「…それで?」
神に対して不遜な態度と、たしなめられそうな様子で友雅が尋ねると、そんな態度を構わないように白龍が答えた。
「やっとおまえたちが、定められた運命を歩み始めるのを祝福しに来た」
「定められた?」
「そう。神子に、地の白虎に選ばれた事、互いを想いあう事、子をなす事、…、そして神子の世界で生きて行く事」
友雅はびくりと体を揺らした。
まだあかねにすら告げていない決意を、何故?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ