友雅さん・長編

□想いの行方
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第6話

友之を探す為、頼久と天真、泰明と詩紋の二手に分かれて探す事になった。
頼久達は東を、泰明達は北を。

泰明達はまず人通りの多い朱雀大路に向かった。
「これだけ人がいると…」
「…」
泰明は懐から人形を取り出した。
と、その時。
「あれ?泰明?」
二人が振り返ったその視線の先には、懐かしい人物が立っていた。
「イノリくん?」
背の高い、カヅキを被った青年に名前を呼ばれ、イノリは目を眇めた。
「誰だ?お前」
「って、あ、僕だよっ、詩紋だよ」
「はぁ?」
少し見上げるように青年の顔を覗き込むと、確かにそれは自分の片割れにそっくりだった。
「し、詩紋?」
「うん。久しぶり」
「昔話は後にしとけ」
イノリとの再会にはしゃぐ詩紋を窘めるように泰明が言った。
「あ、ごめんっ。僕たち急ぐから」
また後で。
そういいそうになった詩紋の肩を、イノリが掴んだ。
「待てよ。一体何しているんだ?」
「子供を探しているんだ」
詩紋は思わず答えてしまい、あっと思った。
イノリに話してしまっていいのか?
あかねは出来るだけ知られたくなかったかもしれないのに。
だが、今度は泰明が話し出した。
「イノリ、このあたりで友雅によく似た子供を見なかったか?」
「友雅?いや見なかったぜって、あいつに似た子供?」
「…」
イノリは詩紋の肩をぐっと掴んだ。
「何か訳ありそうだな…取り敢えず一緒に探してやるよ。詳しい話は後で聞くからな」
「…、うん」
詩紋はあかねに申し訳なく思いながら、強力な助っ人を手に入れ、ほっとした気分になった。


その頃。
友之は、探していた人物に抱き上げられているとは気付かずに、友雅の腕の中ではしゃいでいた。
「ほう?では友之は花が好きなのだね?」
「うん。ママにいっぱい教えて貰ったよ」
二人は清水寺まで来ていた。
寺の境内には、夏の花が色とりどりに咲いていて、二人の目を楽しませてくれた。
「桜でしょ?山吹、藤、桃、梅、のうぜんかずら、萩、女郎花…」
ママという人に教えて貰った花の名前を一生懸命唱える姿に、友雅は目を細めた。
「でねっ、ママがね一番好きな花よって教えてくれたのがね、木蓮とね、それから…」
そう言って、友之が指差した先の花を見て、友雅は思わず息を呑んだ。
「たち…ばな?」
「うんっ、橘の花。おじちゃんのお名前と一緒だね」
「…、ああ、そうだね」
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