神子さまたちと野獣たち

□似たもの同士
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あかねは必死に抵抗するが、ライオンにコウサギが刃向かう位(正に見た目もそんな感じ)無駄な事だった。
そして、口も体力もライオンには到底叶わないコウサギは、哀れライオンの餌食となってしまったのだった。


その翌日。
ゆうべあれだけあかねに『お仕置き』をしたのだというのに、まだまだ足りなさそうな友雅は、その書店に向かった。
一度その男の顔を拝んでやろうではないか?
そう意気込んで書店の中にはいる。
まさか1日ですぐ、その男を見つけるとは思わない。
何度かくればそのうち会えるだろう。
そう思いながら、書店をぐるりとめぐっていた時だった。
「うーんっ」
一人の少女が必死に棚の上の本を取ろうとしていた。
あれは無理だろう?
友雅は少女の必死さに、苦笑しながらも、昨日のあかねはこんなシチュエーションだったのか、と思った。
そして。
「これかな?お嬢さん?」
すっと本を手にとり、少女に渡す。
すると、少女は目を丸くして友雅を見つめた。
おや?
意外な反応に、友雅も驚く。
「ひす…あ、違うか」
どうも彼女『も』他人と間違えたらしい。
「君?」
「あっ、ありがとうございましたっ」
間違えたのが恥ずかしかったのか、少女はぺこりとお辞儀をすると、逃げるように去っていってしまった。
「…そんなに私に似ているのかねぇ」
友雅はくすりと笑った。
もしかしたら、あの少女が間違えた、『ひす』なんとかとは、昨日あかねが私と間違えた輩かもしれないね。
そう思うと、その輩に意趣返しができたのかもしれない。
友雅はにやりと笑った。


更に翌日。
あかねは再び書店にいた。
「まったく子供みたいなんだから」
ぶつぶつ文句を言うのは、最愛の彼の事。
昨日、友雅はご機嫌で家に帰ってきた。
曰わく。
「ちょっとした意趣返しができたのだよ」
何に?とはあえて聞かなかった。後悔先にたたずというものだ。
「あんな子供っぽい人だったなんて」
あかねは友雅と出会った時を思い出す。
優雅で優しくて、大人の余裕があって。
そこが彼の魅力であり、困った欠点だったのだが。
あかねを多分に子供扱いしていたのだ。
だが、あかねへの想いが本気だと思った途端に、急に子供になった。
とにかく独占欲が強くなった。
というか、それを口実にいちゃいちゃべたべたしたいだけらしいが。
「時と場所を考えて欲しいわ」
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