神子さまたちと野獣たち

□始まりの日
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「…って事なんですけれど…」
花梨は翡翠の会社の会議室で、その人に事情を説明した。
「まあ、花梨さんの望みであるなら、お手伝いするのはやぶさかではありませんが…」
「ありがとう、結城さんっ」
花梨が泣き付いたのは、翡翠の第一秘書である結城だった。
翡翠が時々連れていってくれるパーティーなどで、色々な会社の社長秘書を勤めている人をみた事はあるが、結城ほどあらゆる意味で完璧な人物は花梨はいなかった。
そんな彼女ならば、花梨の進路指導(?)も的確にしてくれそうだ。
…ただし、素直にそうしてくれるか、が問題なのだが。
「ですが…秘書、よりも共同経営者として、隣に並ぶ、というのもよろしいかと思いますよ」
結城は真面目な表情でもう一つの道を指し示してみせた。
「共同経営者?」
「はい。花梨さんも我社の役員になっていただいて、お二方で会社を発展させる、というのも面白いかもしれませんよ?」
結城のそんな提案に、花梨は眉をひそめた。
「経営って…簡単なものじゃないでしょう?」
「ええ。一筋縄ではいきませんわ。でも、花梨さんなら出来ると、私は思いますし…、やはり後ろに控えてサポートよりも、共に同じ目線で目的に目指す、というほうが、社長や花梨さんの性格からすれば相応しいかもしれませんよ」
結城はそういうと、極上の微笑みを見せた。
花梨は再び悩んだ。
確かに秘書のようなサポートよりも、二人で同じ場所を見ている対等な立場のほうが、翡翠が好みそうだし、自分の性格に合っているかもしれない。
とはいえ、会社経営なんてどうすればいいのやら。
「これからの事はこれから考えるか」
実際そんな事になるのはまだ少し先の事で、それよりも先にしなければならない事があるのだ。
「そうですわ。あ、でも…花梨さんが役員になられたあかつきには、私を秘書にしてくださいね♪」
結城はそう言って、花梨の手をぎゅっと握った。
…そういえばこの人、女の子大好きだった。
その事をさっぱり忘れてた花梨は、結城に相談した事をほんの少しだけ後悔したのだった。
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