神子さまたちと野獣たち

□始まりの日
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今、二人は同棲している。
いずれは、とは思っているし、花梨だって結婚するなら翡翠しかいないと分かっている。
だけど、つい最近まで高校生だった訳で。
大会社を背負う彼の妻というには、いささか不安があったのだ。
実際のところは、花梨が女子高生だろうが中坊だろうが、嫁でさえあれは翡翠は充分で、妻の身分なんて仕事の障害になんてなる繊細な仕事もしていないのだが。
けれど、翡翠は花梨の気持ちを尊重してくれる。
花梨がまだ早いと思っているから、翡翠も無理強いはせず、この曖昧な関係を続けてくれているのに。
それに甘えていていいのだろうか?
「でも…あかねちゃんみたいにすぐ結婚できる位、なんでも出来るわけじゃないし…」
花梨はため息まじりに、呟くように言った。
「私だってなにも出来ないわよ」
悩む花梨に、あかねはふわりと笑いながら答えた。
「家事だってなんだって友雅さんに手伝ってもらうこと多いし。それに、病院の事も、お医者さんの彼に対して何が出来るか分からないし、ね」
「…でも、あかねちゃんは友雅さんのお手伝いをする為に、看護婦になる勉強をしているんでしょ?」
花梨は少しだけ羨ましそうに言った。
あかねは高校卒業後の進学に、迷う事なく看護大学を選んだ。
それは、近い未来あの総合病院の院長になる友雅の手伝いをするため。
花梨だって翡翠の仕事を手伝いたい。
秘書になって、翡翠と一緒に世界中を飛び回ってみたい。
だけど、じゃあどうすればいいのか、具体的な事は一切分からない。
「なら、聞いてみればいいじゃない?」
「え?」
うだうだと悩む花梨に、あかねはあっさりと言った。
「1番アドバイスしてくれそうな人がいるでしょ?」
秘書になりたい花梨に、的確なアドバイスをくれる人。
花梨はその時、一人の人物が頭に浮かんできた。
「そっか、そうだね。ありがとうあかねちゃん。早速聞いてくる!」
花梨は即座に立ち上がり、店を出ていったのだった。
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