神子さまたちと野獣たち

□神子さまお宅訪問〜花梨のお初は誕生会から 編
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『でも、ちょっと残念だったよねぇ』
電話の向こうで花梨が言った。
あかねが花梨の家に行き、花梨のパートナーである翡翠と会ってから一週間程が経っていた。
そして、花梨から電話がやってきて、色々話をしているうちに、冒頭の言葉となった訳だが。
一体何が残念かというと、花梨はあかねの旦那である友雅と会う事が出来なかったのだ。
急な仕事が入ったとかで(それ以前に、行きたくないなど子供のようなわがままを言い出す友雅をあかねが涙ながらに説得したことは、花梨にはあえて伏せている)、花梨の家に友雅は行く事が出来なかったのだ。
『ほら、あの翡翠さんとすっごく似ているっていうじゃない?どれくらい似ているか、この目で確かめたかったのに。…まあ、性格はあのひねひね翡翠さんには似てないんだろうけどね』
「ひね…、あーまあ、ひねてはいないんだけど…」
…時々子供っぽくなるんだよね。
花梨は心の中で思ったりしたのだが、友雅の名誉の為にあかねはあえてそこには触れなかった。
『いいよなぁ、色んな意味で、ちゃんと大人な人が旦那様で』
「あははははっ」
…やっぱりちゃんと言っておけばよかったかな?
などと少し考えたが、その辺りは笑ってごまかす事にした。
『いつかちゃんとお会いしたいですって伝えておいてね?』
「うん」
あかねは素直に頷いた。
その時、ふとある事が浮かんだ。
「あ、あのさぁ、今度の金曜の夕方って暇かなぁ?」
『金曜?…えーと、暇よ?それがどうかしたの?』
「あのね、私の友達で、友雅さんとも知り合いのみんなと、友雅さんの誕生日パーティーを開く予定なの。まあ、お仕事がら、突然に…って事があるかもしれないんだけど、その時はその時って事にして、みんなで騒ごうって…。もし良ければ、花梨ちゃんもどう?」
あかねはいい案を思いつき、楽しそうに尋ねた。
花梨もそんなあかねにつられたのか、嬉しそうに答えた。
『え?いいの?』
「うん。友達はみんな気さくだし、花梨ちゃんともすぐに打ち解けられると思うし…、どうかな?」
『行く行く!…っと、あ、でもちょっと待ってね』
花梨は即答しそうになって、急ブレーキをかけた。
『翡翠さんが拗ねるかもしれないなぁ。せっかくの金曜日なのに、私を置いて出かけるのかい?とか言って…』
花梨の言葉に、あかねは苦笑してしまった。
どこの家庭も、同じよいな苦労をしてるのかもしれない。
それは貴女と花梨だけだ、とツッコミを入れる人物は誰もいなかったので、あかねはぽやぽやとそんな事を思っているうちに、ある案が浮かんだ。
「なら、翡翠さんも呼ぶ?」
『え?いいの?』
太っ腹ないとこの言葉に、花梨は驚いた声をあげた。
「え?勿論だよう?人が多い程盛り上がるし、それに、友雅さんと翡翠さんを会わせてみたくない?」
『あ、みたいかも!』
「きっと話もあって、いい友達になれるかも」
『私達みたいにねぇ』
流石いとこ同士。見事な同調をみせた。
…だが、それが当の主役達にはまことにもって有難迷惑極まりない事を、二人は全く気付いていないのだった。
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