いただきもの

□ふんわり、今さら響くよ
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戸を閉め、鍵をかけた。

今日は風が強い。
戸をしっかり閉めて置かないと風で開いてしまいそうだ。



「ねぇ、父さんはぁ?」


「今日はもう帰って来ないかもね…」


「嘘だぁ!
俺、兄ちゃん達と短冊に書いたんだから!帰ってくるよ!」



金髪を揺らしながら、息子は部屋の中を走り回る。

父親に会えない寂しさを紛らわして居るのだろう。

その内、疲れて眠ってしまうのも時間の問題だ。




「もうっ…床で寝るなんて、誰かさんに似ちゃったのね…」



三十分もしない内に息子は眠りに付いた。

私の微かな呼吸音だけが、部屋に響く。


息子をベットに寝かせて、ふと窓を見た。

壁に寄り掛かる笹。

近付いて息子の短冊をみると、しっかりと『父さんが帰って来ます様に』と書かれて居た。


叶うと良いな、なんて。


本当は、分かってた。
息子の願いはこんな事じゃないって。

私が彼に逢いたがって居るのを知って居たんだ。


我ながら、いい息子を持ったと思う。



「そーゆー回りくどい所も、そっくりね」



「誰にそっくりだって?」



バンっと窓が開く。
そう言えば、窓の鍵はまだ閉めて居なかった。



「リっ…!!!!」


「シっ…大声出したら起きちゃうだろ?」



私の口を手でふさぎながら、彼は窓から部屋へと入る。

泥だらけのブーツは脱ぎ、靴下も脱ぎ捨て、
裸足で彼は床に下りた。



「帰って来るなら手紙くらいよこしてくれたって…」


「驚かせたかったんだ」


「もう…」



呆れた、と溜め息をつくと、彼は私を抱き寄せた。

久々の彼の温もりは、少し冷たい。
そして何だかくすぐったい。




「ただいま」




ふんわり、今さら響く声が、私に幸せを教えた。



(おかえり、リンク)

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ネスさまが運営されるサイト「楓」さまにて七夕記念のフリー配布だったリンク夢です!
サイトさまでは、なんと3つものフリー夢が配布されていたのですが
その中でも、一番胸をほんわかさせてくれたこの夢を持ち帰りました´`*

最後の一文にあるように「幸せを教え」てくれる夢でした、
こんな素敵な作品を飾らせていただけるなんて、なんて運が良いんだろうと思っています*

ネスさま、ごちそうさまでした!

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