宝箱
□球磨川禊の実況中継
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「『さあ、ホムペ千人達成記念として…』」
「『エプロン着けられてるんだから、鯛焼きくれてもいいよね!?(泣)』」
あげませぬ。
---球磨川禊の実況中継---
はい、おはよう、みんな。みんなのアイドル、球磨川みそ…うん、自重するよ。
今日は入場者数千人記念(僕が思うに、もっと上目指して喜んだら?って感じなんだけどね)として、
エプロン着けられてるんだけどね。
さっきからめだかちゃんが離してくれないんだ。
…ま、嬉しいけどさ。
「めだかちゃん、いい加減球磨川から離れろ!」
「嫌だ!」
めだかちゃんと善吉ちゃんには、今にも友情、いや愛情?に、亀裂が走りそうだね。
喜ばしいね。
「『めだかちゃん、離してくれよ。僕はどっちかというとエプロンを着けたくないからね』」
何で内心と180度ひっくり返ったこというんだろうね?
あ、めだかちゃんが僕を…はな…すどころか、お姫様抱っこ!?
何をするつもり!?
「『め、めだかちゃ』」
「球磨川、調理室へ行こう。善吉!カメラを持って来い!」
「命令形!?」
いやいやいや、調理室って…。
まさか…写真を撮るの?
このエプロン禊を!?
やだやだやだよ!高3の健全男子にこれはキツイ!
ヤヴァイよ、僕!破滅の危機!
蛾々丸ちゃんにぶっ殺される時より、汗かいてるよ!
てゆうか高1の女子にお姫様抱っこされている時点で僕は終わってるよ!
終着駅いずこ!!!
「球磨川、貴様がこんなにも可愛らしい生物だとは思いもしなかったぞ」
「『生物だなんて、嫌な言い方するね…』」
僕をメルヘンな世界に連れ出しているめだかちゃんは、
ずんずん早歩きで調理室へ向かう。
善吉ちゃんはムスッとした顔で、めだかちゃんの後ろ三歩分空けて歩いている。
今にも腹を抱えて笑い出しそうなぐらい、
不気味な構図だね。
「さあ着いたぞ球磨川。裸エプロンに……なりやがれ!!!」
裸エプロン!?
なりやがれ!?
「『めだかちゃん!なりやがれだなんて、使っちゃ駄目だよ!今でも十分駄目だけど!』」
「そうなのか?ふと手に取った漫画の台詞にあってな。中々潔かったものだから…」
潔い……のか?
「まあ、つべこべ言わず、裸になるがいい」
…うん、やっぱりこの子、嫌いだ。
「勘弁してくれ、めだかちゃん。俺、出て行くからな」
頭をやれやれという風に振り、調理室から出て行く善吉ちゃん。
ちょ、ちょっと待って!
僕を見捨てないで!!!
今なら野良猫、野良犬、またはそこら辺のワニの気持ちが分かるよ!!!
僕の理想のご主人、もといめだかちゃんは何処!
いや、ご主人はダメだ…。
珍しくミスったよ。
これじゃあエプロンを常備しているみたいじゃないか。
腐女子の常備薬代わりになる気かよ、僕。
「『めだかちゃん、いい加減にしてくれよ。裸になるわけないだろう?』」
「お願い、裸になって!」
ここでデレを発動するとか、不意を突くにも程があるよ。
可愛すぎるだろ…。
…頼まれている内容は、ぶっ飛んでるけどね。
「『いや…無理というか…』」
慎重に、丁重に、お断りする。
「いや球磨川、貴様に投書が届いているぞ」
「『僕に…?』」
「裸エプロンしてほしい by生徒会長」
「『君じゃないか』」
「わ、私ではない!」
自分の職務の暴露、その動揺、禁物だぜ。
「『いつ投書したの?』」
めだかちゃんという前提、というかめだかちゃんだよね。で、話す。
「たった今、心の目安箱にだ」
誇らしげな顔が、僕の怒気を僅かに増やす。
「『そんなのは通用しないよ』」
「とっ、とにかく、脱がんか!!!」
キャァアアアア!!!
痴漢、暴漢、強姦!せめて和姦!
セクシュアルハラスメント!略してセクハラ!
パワハラは…どういう意味だっけ。
って考えてる場合じゃない!
「球磨川、生徒会のマスコットキャラクターになるべきだな」
めだかちゃんの笑顔が、シニカルにしか見えない!
あっ、ちょ、ボタンが…っ。
---球磨川禊の実況中継停止、いや中止---
(おわり)