AK
□間違いは有り得ます
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(past:神威14歳、阿伏兎29歳くらい)
「あーぶーとっ」
子供特有の…甘えるような舌っ足らずような、文字で表すとひらがなで書いたように自分の名前を呼ばれて、ギクリと肩を揺らすのは致し方ないことなのです。
ひらがな
阿伏兎は、廊下の端から自分にブンブンと大きく手を左右に振る神威に、気づかれぬように溜め息を吐くと軽く手を振り替えしてやった。
するとよく見ていたわけではないのだが、ピョコンと彼女のチャームポイントである頭の上に立ち上がった髪が揺れた気がして嫌な予感がする。嫌な予感は外れず、次に目に入る光景はこちらに突進して来る神威の姿であった。
何が良かったのか、この少女に気に入られてしまったらしい。
突進の末、抱きついてきた神威を阿伏兎は抱き止めてやるのだった。その光景を見られては同僚にからかわれるこっちの身にもなって欲しいと思う。
(ロリコンじゃねーよ、俺ァ)
廊下のど真ん中で今日は戦ってきたらしい相手のことについて、興奮冷めきらぬまま語る神威をどうどうと宥めながら食堂へと向かうことにした。
「あのね、今日ね、すっごいつよい人がいたんだよ!」
神威の前には一人分とは到底思えない量の料理が並べられていた。
食べ物を与えれば、目の前の少女も少しは落ち着くかと思ったがそうではなかったようで、食べる手も喋るのも止まらなかった。
最近癖になってしまった溜め息を、阿伏兎また吐くはめになった。食べながら喋るのは行儀が悪いぞ、と注意をするのは初めてではないはずだ。
適当に相槌を打ちながら、ふと少女の手に目が止まった。
服は既に綺麗なものに取り替えているようだが、白い肌によく目立つ赤い痕…傷だらけだった。
夜兎の治癒力をもってすればこの程度すぐに治るのだが、阿伏兎は何故かとても気になった。
何だろう、この気持ちは。
阿伏兎の意識が自分の話からそれていることに気がついた神威は、ぷうっと頬を膨らませて阿伏兎の顔を覗き込んだ。
「ねぇ、あぶと。ちゃんと聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。で、そいつには勝ったのか?」
「もっちろん。当たり前だよ」
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2011.8.25
近所のお兄ちゃんが大好きです!的な。
銀ちゃんと神楽に置き換えても可。