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□絶望遊戯
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俺には2人兄貴がいるけど、
2人とも半分しか血がつながっていない。
俺が中学3年生の頃に、
兄2人の母親と親父が離婚して、
愛人だった俺の母親が俺を引き連れて再婚した。
仮にも同じ種のはずなのに、俺は2人に比べて相当出来が悪いらしい。
長兄の智は超エリートで、親父の会社を継ぐことが決まっているようなもんだし、次兄の哲も捻くれた性格さえ目をつむれば智同様完璧だ。
俺はというと、地元の普通の中学校平凡な成績で卒業して、友達につられて入った地元の高校で平凡に…まぁ、たまに赤点とったりもするけど卒業は出来るだろう。
俺たちの父親は厳格で、しつけとか、教育にうるさかったらしい。
特に智は長兄だから相当スパルタな教育をされている。
もともと生真面目な性質だったから、文句ひとつ言わず従ってたらしいんだけど、次兄の哲はそうはいかなかった。
もともと音楽が好きで才能もあった哲は音楽大学への進学を希望していた。
成績も実力も十分で大学からの推薦もきていたから、誰もが哲の音大進学を疑わなかった。
しかし、その期待は父によって打ち砕かれた。
父の希望は、兄と同じ大学で経済を学べとのことだった。
無理矢理進路を変えられた哲は不自由な人生に絶望して、性格が段々と歪んでしまった。
その様子を見ていた俺の母親が、哲みたいにならないように子供の意思を尊重して好きな道を選ばせるっていう教育方針を採用したから、俺はこの通りなんのしがらみもなく自由に暮らしている。
まぁ、俺に親父のスパルタ教育が採用されていたとしても、ついていけたはずがないんだけど。
なんたって俺は要領が悪いし、根性がない。
そして、そんな俺をふたりの兄貴は蔑んでいる。
「聖、進路は決まったの。」
二週間前、三者面談で担任に進路の事をつっこまれて以来、母さんは毎日同じ質問をしてくる。
「まだだよ。そんなにすぐ決まるわけないって、
母さんもわかってるだろ。」
「あなた、やりたいことはないの?ほら、先生から貰った進路決定の紙の提出日はいつだったっけ?それまでに決めないといけないんじゃないの?」
「んー…適当に書いて出しとくから、心配しないで。」
「適当って、……お母さんあまり人の人生についてごちゃごちゃ言いたくないからうるさく言わないけど、聖のこと心配してるんだからね。
何かあったらお母さんにちゃんと相談するのよ。」
「わかってるよ…それより母さん、明日…」
「あ、ごめんなさい、その事についてだけど、急にお父さんが温泉旅行に行こうって…」
「映画は…ナシ?」
「本当にごめんね、もう旅館の予約いれちゃったみたいなの。」
「…いいよ、行ってらっしゃい。楽しんで。」
母さんは少し悲しそうな顔をして、俺の頭を撫でた。
母さんは、いつまでも俺を子供扱いをする。
「映画、また今度行こうね。おやすみ。
」
「おやすみ。」
部屋のドアが閉まると、俺はベットの上に寝転んで溜息をついた。
中学まで母とふたりきりで、助け合って生きてきたから俺達母子は人並み以上に仲が良い、と思う。
だから今回の映画も、久しぶりに2人で遊びにいけることが嬉しくて結構楽しみにしていた、のに。
携帯を開いて、適当な女の子に電話をしてどこかで待ち合わせようと
思ったけど、
誰かと会うには気分が重すぎてやめた。
……このままじゃ、ダメだ。
何の目標もなく生きているせいで、年々ゆっくり鉛が流し込まれていくように身体が重くなっていくし、感情の起伏も薄くなり生きている感じがしなくなっていく。
やりたいことなんてないし、将来どうしたいかなんてのも決まらない。
何だか、何をしても中途半端になってしまいそうで、なにもヤル気が起きない。
最近は何のために生きてるんだろう、って思うことがおおくなってきた。
…中学までは、
母さんを楽させてやるんだって意気込んでたっけ。
少なくともあの頃は真っ当に生きてる感じがしたな。
目標があったからかな。
ぼーっと考え事をしているうちに、時計は1時をまわっていた。
無理矢理目を閉じて眠ろうとしたけど、眠気はなかなか訪れてくれなかった。
いいか、どうせ起こされることになるんだし。
チャリ、チャリ、といつもの鍵の音が聞こえる。
そして、ドアが開いて、
俺の最も嫌いな時間がはじまる。
「聖、いるか?」
ノックもせず無遠慮に他人の部屋に入るのは次兄の哲。
声を聞いただけで胃が締め付けられて吐き気がする。
返事をしないで枕に顔を埋めて寝たふりをしていると、思い切り髪の毛を掴まれ引き上げられた。
痛い。
「シカトしてんじゃねーよクズ。蹴るぞ。」
「寝てた。離して、髪」
「嘘つくな」
髪の毛を離してもらって安心したのもつかの間、頬を平手打ちされる。
「お兄様を欺こうとは、いい度胸じゃねーの。頭悪いくせに無駄な努力すんなよ。」
「……」
打たれた頬が熱をもってヒリつく。そんなに乱暴しなくてもいう事ちゃんときくのに。
どうやめさせるか、じゃなくて、どうしたら最小限の被害で済むか、という思想がもう駄目だと思う。
俺はどこまで弱気なんだろう。
「オラ、下脱いで跪けよ。10秒で」
言われたとおり、急いでズボンとパンツを脱いで冷たいフローリングの床に跪く。
そうしたら哲も脱ぐから、俺はフェラチオしないといけないんだけど、上手くやらないとまた殴られる。
「さっさとしろ。」
「ん…」
舌を使って丁寧に舐める。
苦しくても、休んじゃいけない。哲が怒るから。
「っは、お前の良いとこ顔だけしかねーから、コッチ系の仕事したら?オッサンのチンコ舐めて金貰うんだよ」
進路決まってないからって、そんな劣悪な仕事するわけないだろ。
でも、否定の言葉を発したら怒りの琴線に触れるかもしれないからやめとく。
「こんなんじゃ客とれねーぞ?」
後ろから頭押さえるのやめてほしい。喉苦しい。
しかももう限界でしょ?
……ほら、出た。
口の端からポタポタ精液が落ちるので、
慌てて手で抑える。
全部飲み終えたら、舌をだして見せないといけない。
そうすると哲は満足そうに口角を上げるのだ。
それから俺のやるべきことは、ローションを準備すること。
隙をみて解さないと、奴は俺のことなんて構わずに突っ込んでくるから、困る。
最近は目の前でオナニーしろって命令される。
今日もどうせしろって言う。
だから言われる前にやってやろうと思う。
哲は自分の調教通りに俺が動くと機嫌が良くなる。
前にも後ろにもローションを垂らすと、甘ったるい香りが鼻をついた。
頭が少しボーッとする。
間違えて買った香り付きのローションで墓穴を掘ったかもしれない。
「ぁ、は…ぁ…っ」
「!一応、学習能力はあるじゃねぇか。」
哲はいない事にして、行為に没頭する。
あ、今日は上手くいった。イける…
……と思ったのに。
寸前で両手を一括りにされて、ベットに押し倒されてしまった。
「なんで…?」
「いーから、足開け雌豚。」
「ひっ、やぁ……っ!」
ズブブ、と音をたてて哲のモノがナカに入ってくる。
圧迫感で吐きそう。
昨日は朝から何も食べてないから、何も出るモノはないと思うけど。
「あっ、あんっ…ぅあっ…」
「っく…キツ…力抜け」
そんなこといわれても、
痛さでどうしても身体が強張ってしまう。
哲はいつも自分勝手に挿れる側だからわかんないだろうけど。
「ふ…ぅっ、もっと、優しく…」
「ぁあ?なんでよ。」
徐々に腰の動きがはやまっている。
痛い。もっとゆっくり動いてほしい。
やめてと泣いて乞うと余計に嗜虐心を煽るし、頑張って甘えた声でお願いしたらしたで罵られて、酷くされるし、俺は唇を噛みながら快楽が訪れるのを耐えて待つしか術はないのだ。
「はぁっ、泣くなよ。俺が虐めてるみたいだろ。あはは。」
虐めてんだよ。
わかってる癖に。
「お前が上手におねだりしたら気持ちよくしてやる。ほら、やれよ。」
「……ぅ、ぅ」
早くこの苦痛から開放されたい一心で、殆ど無意識で哲のシャツの袖を掴んだ。
何を言っていいのか思いつかなかったから、お願いしますって譫言みたいに何度も言った。
声があまり出なかったから、聞こえてるか心配だったけどちゃんと伝わってたみたいで、ゆっくり動いてくれた。
俺の気持ちいいとこばっか突いてくる。
「あっ、あぅっ…イっちゃ…う」
出した精液が自分のお腹にかかって、気持ち悪い。
なすがままに緩慢な速度で揺さぶられていると、ふと、哲がドアの方を振り向いた。
つられてみてみると、ドアがあいている。
「兄貴もまざる?」
ドアの隙間から、通りすがりの長兄、智が無表情で視線だけ投げかける。
哲兄は最低だ。
智兄が階段から智兄の部屋にいく途中でこの部屋を通るってしっててわざとドアを少し開けておくんだ。
最低、最低最低最低
______そして、
俺がこうやって蒼ざめていると、決まって哲は、目の醒めるような恐ろしく綺麗な顔で微笑むのだった。