短編ブック

□じじい
1ページ/1ページ



字が汚くて悪いんですけど、どうぞ読んでください。
ここだけの話。

この課題が一段落したら死のう。死のう死のう。
そういうふうなことをいつも思っていて、私は悩み悩んで、実家に帰った折、ついに祖父に「死にたい」と吐いたのです。
その時の祖父、じいちゃんが、一度びっくりしておいて「よし。いいぞ、いいぞ。その調子だ」と嬉しそうに破顔して私の頭を撫でたもんですから、私はそれが有り難くて。有り難くて。
ぐっ、と涙を堪えたのを覚えています。
じじいってすげえ、と思ったのを覚えています。
じじいの恐ろしさというか、底力を見た気がしました。
じじい、ここにあり。永久なり。
わたし、優しい人になりたいです。
二十にもなってそんな、少女のような処女のような、いやもっとピュアーなもの、イヴにさえなったような気がしました。
私のような人間に、じじいの血が生き続けて流れていることを誇りに思いました。
これが途絶えてはならない。
私は子どもをたくさんつくらなくてはならないと思いました。全く、調子のいいお馬鹿ちゃんです。
私はこういう人間が嫌いですが、花宮さんがこんな私でも好きだと言ってくれたので、私も花宮さんが好きになりました。
そうして私達は3人の子どもをつくって幸せに別居しましたとさ。とっぴんしゃん。
そう終わってくれればいいんですが、私が二十三、つまり実質4人目の子を宿すまでにじじいは死に、第一子も死んでしまったりしたのです。
ふう。ここまで何も考えず自分の人生を振り返ってみれば、何だか馬鹿らしくなって、言葉遣いもアホの子のようで、もうちょっと賢い言葉を使ってみようか知らん。
はい、はい、コケティッシュ、都知事、坂口安吾の堕落論。頓智。あとは、そうね、穴激、壊死、口上筆記。ああ、ばからしい。

では。では。失礼しました。
誠に勝手ながら、文面上ではありますが、また会えるのを楽しみにしております。

木口 弘美。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ