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□いつか繋がる恋心
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会ったのは保育園から。

記憶に残っている時からでいくと、幼稚園から始まって小学校中学校、果ては高校まで一緒。

さらに言うならこの間クラスが別れたことなんて一度もない。
世間に言わせれば、幼なじみの典型的な腐れ縁。

私の勝手な願望で言えば……
運命、とか――。


あー、馬鹿らしい! 何この妙な乙女思考。早く帰ろっ。


「うっわ、最悪……」


変な思考から抜け出して、鞄を引っ掴んで教室を出た。
靴を履いて、さぁ帰ろうとした途端のことだった。


「土砂降り。夕立かな」


周りが白く見えるほどの大雨。
そして、生憎今日は傘を持っていない。
鞄の素材的に教科書が濡れることはないだろうが、自分はびしょ濡れ必至だ。


「どーしよ……」

「なんだぁ? お前、傘忘れたのか!」


相変わらず馬鹿だなーとか、雨音に負けないくらいの声で言って来るのが聞こえて、そちらを睨むように見る。

もちろん、相手が誰かなんて解りきってるし。
ギッ!って音がするくらい睨んだ。
けど、それは一瞬で崩れた。

そいつが私の幼なじみで、初恋の相手で、現在進行形で片思い中の野郎とか関係ない。だって――。


「何やってんのよ、あんた……」

「何って、帰るところだ!」

「そーじゃない!」


思わず屋根の下から出て詰め寄った。
そう、私の幼なじみことこの馬鹿野郎は、自転車に跨がった状態で雨に打たれながら話し掛けて来ていたのだ。


「びしょ濡れじゃない!そっちこそ馬鹿じゃないの?」

「お前ももうびしょ濡れだし」


うるさいわね、あんたのせいよこのヤロー。
いや、まあ私の責任だけど。

でもホントにビショビショになってしまった。
早く拭かなければ風邪を引きそうだ。


「送ってやろうか?」

「……は?」


突然何なの、この馬鹿は。
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